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2005.08.13

〔稲荷(いなり)〕の金太郎

『鬼平犯科帳』文庫巻16にはいっている[見張りの糸]は、品川の旧友宅へ一泊した〔相模(さがみ)〕の彦十が、〔狢(むじな)〕の豊蔵の弟の〔稲荷(いなり)〕の金太郎を見かけて尾行(つ)け、三田八幡宮(御田八幡神社 港区三田3丁目)門前の茶店〔大黒や〕へはいっていったのを突きとめた。

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三田八幡宮(『江戸名所図会」 塗り絵師:ちゅうすけ)

さっそくに、〔大黒や〕の向いの、〔京 御仏像厨子・御位牌 和泉屋〕忠兵衛方に二階に見張り所が設けられた。

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年齢・容姿:50がらみ。身なりはさっぱりした商人風。
生国:武蔵(むさし)国比企郡(ひきこうり)上狢(かみむじな)村(埼玉県比木企郡川島町上狢(かみむじな))。
生国調べで苦労する「通り名(呼び名)」が、どこにでもある「追分」「落合」「押切」「神明」「下山」などである。〔稲荷」にいたっては、ちゃんとしてたものだけでも全国に12万社あるといわれている。
しかし、〔稲荷〕の金太郎の場合は、兄が〔狢(むじな)〕を名乗っている。それで埼玉県の川島町(かわじわまち)が候補にのぼった。
地図を見ると、町の北端に「稲荷塚古墳」があり、角川『日本地名大事典』の近世の項に、上狢の稲荷社は「上・下狢村、下新堀村の鎮守」とある。

探索の発端:先記したように、彦十が北品川の手前の歩行(かち)新宿2丁目の飯盛旅籠からでてきた金太郎を尾行して住いを突きとめた。

結末: 2件の結末がある。1は、見張り所として借りている仏具屋〔和泉屋〕忠兵衛方を襲った賊を、鬼平と沢田小平次が処置したの。
2は、〔稲荷〕の金太郎一味17名が押し入ろうとしていた赤坂・伝馬町の乾物問屋〔丸屋〕で捕縛されたの。

つぶやき:「狢(むじな)」を探していて、「稲荷塚古墳」にあたったのは幸運であった。こうなったら、上狢の稲荷社へお礼詣でをしなくては、な。

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