〔小金井(こがねい)〕の万五郎
『鬼平犯科帳』文庫巻2の[埋蔵金千両] (初出『オール讀物』1969年3月号)では、〔土蜘蛛(つちぐも)〕の万五郎の「通り名(呼び名)」で登場したが、文庫巻11の[土蜘蛛の金五郎] (初出『オール讀物』1973年12月号)と重なったため、万五郎のほうは、文庫10刷(1981年11月1日)から、生国に由来する〔小金井(こがねい)〕に改められた。
年齢・容姿:56歳。小柄。
生国:武蔵(むさし)国多摩郡(たまこおり)小金井村(現・東京都小金井市桜町あたりか)。
探索の発端:麻布の飯倉片町に住む医師・中村宗仙に、「いまの病気を治癒してくれたら100両でも払う」といったことが、芝・新銭座の表御番医・井上立泉から鬼平へ伝わった。
「100両」という金額に不審を抱いた鬼平が、ひそかに探索をはじめる。
結末:いまは引退して信州・上田の城下で小間物屋を営んでいる〔加納屋〕利兵衛こと、元配下の〔須川(すがわ)〕の利吉を呼んできてほしいと、妾兼女中のおけい(24歳)を迎えにやったものの、中村宗仙の治療によって体調回復のきざしが見えると、利吉のことが疑わしくおもえてきた。
馬をやとって、みずからの手で千両の埋蔵金を掘り出しに、小金井村の隣の貫井村へようやくにたどりついたものの、金はすでになかった。そのショックで、心ノ臓がとまってしまった。
埋蔵金は貫井橋---手前から3つ先---の南の地蔵堂に。
(『江戸名所図会』 塗り絵師:ちゅうすけ)
つぶやき:シリーズ第14話目(文庫には、シリーズ前の[浅草・御厩河岸]が収録されている)なので、池波さんとしても力投の結果の、新鮮で出来ばえのいい作品にしあがっている。
上田へ向かったおけいが引き返しを決めた柳瀬ノ渡し
幕府道中奉行製作『中山道分間延絵図 岩鼻=新町間』
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コメント
「鬼平犯科帖」というといつもサスペンスに満ちあふれたストーリーを想像いたします。
この「埋蔵金千両」はとても滑稽なストーリですが、
登場人物の心根がひとり一人丁寧に描写されていると
思いました。
病身を押しての隠し金を渡すまいとする万五郎の行動
掘り起こされた後のなげき、浅知恵のおけいの動き、
宗仙の心配、そして鬼平の鋭さ等等。
それにしても、手下や仲間に毒酒を飲ませ撲殺するような凶悪非道な万五郎や利吉を心臓麻痺や就寝中の病死で、あっけなく楽に往生させています。
もっとつらく苦しんでほしかったのに。
投稿: みやこのお豊 | 2005.04.01 18:19
>みやこのお豊さん
なるほど、万五郎も利吉も、うまく死にましたか。
ふーむ、さすがの池波さんも、そこまでは、考えがおよばなかったようですね。
投稿: ちゅうすけ | 2005.04.01 18:48