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2005.05.24

〔日野(ひの)〕の銀太郎

『鬼平犯科帳』文庫巻21に収められている[春の淡雪]で、〔雪崩(なだれ)〕の清松と組んで、盗賊の首領〔池田屋〕五平のひとりむすめ・おうめを拐(わどわか)して強請(ゆす)った、畜生ばたらきの盗人。
(参照: 〔池田屋〕五平の項)

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年齢・容姿:40歳前後。容姿の記載はない。
生国:山城(やましろ)国宇治郡(うじこうり)日野村(現・京都府京都市伏見区日野*)。
『旧高旧領』はほかに、武蔵国秩父郡日野村(現・東京都日野市日野本町)、伊勢国三重郡(東、西)日野村(現・三重県四日市市東日野町)、甲斐国巨摩郡日野村(現・山梨県北巨摩郡長坂町日野)、美濃国厚見郡日野村(現・岐阜県岐阜市日野(北、南、東、西))をあげている。
上のどこでもいいのだが、いまは京扇の〔平野屋〕の店主におさまっているが、京都を本拠にしていた〔帯川(おびかわ)〕の源助のところへ働きたいと売り込んできて断られた経緯があるから、宇治の日野村を採った。
「*(アスタリスク)」は、日野の下にいろんな字(あざ)がつくというというしるし。
(参照: 〔帯川〕の源助の項)

探索の発端:京扇店〔平野屋〕の番頭・茂兵衛は、かつては〔馬伏(jぶせ)〕の茂兵衛といい、〔帯川(おびかわ))の源助の右腕だった。引退後、ひょんなことから火盗改メと関係ができた。
(参照: 〔馬伏〕の茂兵衛の項)
茂兵衛が見かけたのは、〔雪崩(なだれ)〕の清松と〔日野(ひの)〕の銀太郎という流れづとめの盗人たちだった。
2人は、現役のころの〔帯川〕の源助に、使ってほしいといったが、銀太郎に血の匂いをかいだ源助が断った。
茂兵衛が尾行すると、2人は荏原郡・中延にある千束池畔の茶店の裏手の茅ぶきの小屋へ入った。

結末:〔池田屋〕五平の幼娘をかどわかした〔雪崩(なだれ)〕の清松と銀太郎は、1,000両の身代金を要求。引渡しにあらわれたところを鬼平に捕らえられた。その前夜、五平一味16名は捕縛されていたのである。五平にしたがって千両箱を担いでいた小者は、鬼平だった。

つぶやき:史実の長谷川平蔵は、盗みなどの罪を犯した者のうち、半分は更生できるが、あとの半分は根っからの犯罪者で、更生は不可能である、と断じている。
さしずめ、この〔日野(ひの)〕の銀太郎などは、平気で〔池田屋〕五平を裏切りったり、幼女を誘拐したりしているし、〔帯川〕の源助も「畜生ばたらきがすきそうな」残忍な奴と見抜いているところからいっても、平蔵が「更生不可能」とサジを投げている後者の男であろう。

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コメント

あッ、と驚きました。〔日野〕の銀太郎は、てっきり、都下の日野市の出、とばかり決め込んでいたからです。

〔帯川〕の源助との関係がありましたか。

まあ、5ヶ国、どこをとってもいい---としていらっしゃいますが、〔帯川〕一味の本拠地が京都ということをすっぽり忘れていました。
京扇の店ですねものね。京都になじみがなければ、仕入れられませんよね。

いわれて気がつくようでは、まだまだ---です。

投稿: 文くばり丈太 | 2005.05.24 09:47

文くばり丈太さん

すでに、150人を越える盗人の生国をご紹介してきました。

まあ、特定しやすい盗人から手がけた、というズルをした面もあります。

あと、120人ばかり、手がかりが薄い者(の)が残った感じです。

そうとうに飛躍した推理(?)を働かせることになるとおもいます。
杜撰な点はご容赦くださいますように、いまからお願いしておきます。

投稿: ちゅうすけ | 2005.05.26 03:38

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