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2005.05.12

〔片波(かたなみ)〕の伊平次

『鬼平犯科帳』文庫巻2の巻頭に据えられている[蛇(くちなわ)の眼]の主役は、道有屋敷の大金を狙う〔蛇〕の平十郎で、配下の6人のうちの1人が、この〔片波(かたなみ)〕の伊平次。
(参照: 〔蛇〕の平十郎の項)

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年齢・容姿:40歳。容姿の記述はない。
生国:丹波(たんば)国桑田郡(くわたこおり)片波村(現・京都府北桑田郡京北町大字片波)。
『角川地名大辞典』が、江戸期後期の戸数は12戸で石高は23石と記しているから、家数も収穫も少なく林業に頼る村洛だったようである。それで、大坂出身の平十郎と結びついたか。

探索の発端:惨劇が行われた。寛政3年(1791)6月20日夜。〔蛇〕一味は予定どおりに、浜町河岸ぞい・橘町に近い道有屋敷を襲ったが、金蔵は空だった。その日の昼間、6,000余両をそっくり幕府へ献上してしまっていたのだ。怒った平十郎は当主・千賀道栄をはじめ家の者を惨殺したが、道栄は虫の息のもとで血で「くちなわ」と書きのこした。
これより前の事件---文庫巻1に所載の[座頭と猿]で逃げ隠れていた座頭・彦の市が女に会いに現われて逮捕され、〔蛇(くちなわ)〕一味の盗人宿が相州・小田原宿の北の山中の部落・上之尾にあることを白状した。

結末:上之尾で全員逮捕。死罪。平十郎だけは引き回しのうえ火刑と。

つぶやき:『鬼平犯科帳』の後半の事件は、鬼平の手配よろしきをえて、ほとんどが未遂におわるようになってしまっている。それでよし、とする読み手もいようが、これは物語なのだからと割りきって、賊側の智謀も見たいとおもっている読み手には、なんとなく物足りない。
それには、この篇の筋立てと筋運びが充分に応えてくれる。

史実をいいたてるのは野暮だが、切絵図でみると、道有屋敷は橘町のもっともっと北西寄り---大和町の西にあった。

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