〔福住(ふくずみ)〕の千蔵
『鬼平犯科帳』文庫巻5に収録の[女賊]で、かつての盗め仲間で、駿州・岡部に引退している〔瀬音(せのと)〕の小兵衛に、息子の幸太郎が女賊[猿塚(さるづか)〕のお千代に、たらしこまれていると告げ、すぐに上方での仕事へ急いだ現役(いまばたらき)の盗人。
(参照: 〔瀬音〕の小兵衛の項)
年齢・容姿:50男。商人風。
生国:播磨(はりま)国明石郡(あかしこうり)福住(現・兵庫県加西市福住)。
名古屋市中川区、岐阜市の福住も候補にはあげたが、滋賀県甲賀市生まれの〔瀬音〕の小兵衛と30年にもわたって気のあったつきあいをしているというし、上方での盗めに出かける途中に岡部へ立ちよっているから、近畿圏を優先した。
兵庫県出石(いずし)郡出石町、同県多岐郡篠山町のは(ふくすみ)と濁らない。それで加西市の(ふくずみ)を採った。
探索の発端:この篇の主役は、〔瀬音〕の小兵衛と女賊の〔猿塚〕の落千代、それに父親が〔瀬音〕をよく手伝っていたことから、事件にかかわりをもつことになった女密偵おまさである。
(参照: 女密偵おまさの項)
〔福住(ふくずみ)〕の千蔵は、〔瀬音〕へ見たことを告げるだけ告げると、そのまま舞台から消える。
結末:舞台から消えたままで、その後のことには触れられない。
つぶやき:聖典には、魅力的な女賊が幾人も登場するが、躰をはっては以下を統率する〔猿塚(さるづか)〕のお千代もそのひとり。40を越えていて28,9にしか見えないというのだから、現代女性なみで゛ある。
ところで池波さんが、「女賊(おんなぞく)」という呼称を与えたのは、このお千代が最初。文庫巻3の[艶婦の毒]のお豊は[女盗(にょとう)]であった。
「女賊」という呼び方が考案されてから、魅力的な女盗人(おんなぬすっと)が創造されたともいえそうである。
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コメント
今日で盗人も170人目、その中で女盗人は確か9人アップされていると思います。
「女賊猿塚のお千代」は、まだ単独ではアップされてませんが、女ながら一味のお頭ですね
盗人のお頭として、、統率力、指導力、情報収集力、技術力などは必要不可欠な条件だと思いますが、女だてらに凄いんですね。
犯科帳の中に女賊のお頭は何人ぐらいいるのでしょうか、これからアップされるのを、期待してます。
投稿: みやこのお豊 | 2005.06.03 00:06
女賊をなるべく取り上げたいのですが、生国を推察するのが困難で。
ということは、男盗人とことなり、池波さんは、女は、生国に関係なく---とお考えになっていて、それで、生国を明らかになさらないのかも。
投稿: ちゅうすけ | 2005.06.03 02:56