〔須の浦(すのうら)〕の徳松
『鬼平犯科帳』文庫巻16に入っている[霜夜]で、、鬼平のかつての同門の池田又四郎が属しているのは、〔須の浦(すのうら)〕の徳松という盗賊一味。又四郎の義妹お吉に、鉄砲洲の薬種問屋〔大和屋〕の引きこみをするように、僧形を装っている配下の〔常念寺(じょうねんじ)〕の久兵衛らを介して強制している。
(参照: 〔常念寺〕の久兵衛の項)
年齢・容姿:どちらもまったく記述されていない。
生国:若狭(わかさ)国遠敷郡(おにゅうこうり)須那(すの)浦(現・福井県小浜市西田烏(たがらす))
熊野市にも「須野浦」があるがある。とはいえ、〔須の浦〕一味のテリトリーは上方から北陸道とあるから、池波さんの念頭にあったのは小浜市の田烏川の南側の「須那浦」とみた。
探索の発端:京橋・大根河岸の料亭〔万七〕で耳にした、隣室の池田又四郎の声に、うしろをつけた鬼平は、又四郎が南飯田町の船宿〔なだや〕へ消えた。しばらく見張っていると、〔常念寺〕の久兵衛と〔栗原(くりはら)〕の重吉が出てきた。2人を尾行(つ)けようとすると、又四郎が尾行をはじめ、備前橋ところで2人を斬り殺した。そのとき、人が集まってきたので、鬼平はその場を去ったのである。
結末:役宅の届けられていた池田又四郎からの手紙に指定された砂村の元八幡へ行って待つと、重傷の又四郎が現れ、〔須の浦(すのうら)〕の徳松一味を殺傷したためにが傷を負ったことを告げ、鬼平の手の中で息を引きとった。
つぶやき:20歳にまだ間があったころの池田又四郎は、兄弟子で銕三郎時代の鬼平に男惚れしていた。よそよそしくされたとおもい、家出して盗みの世界に入ったという。池波さんは、男にも惚れられるほどの人物造型を目指した。
その一方で、又四郎は妻の妹ともできてしまっていた。世の中はまならない。
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