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2005.09.04

型師(かたし)・卯之吉

『鬼平犯科帳』文庫巻6のタイトルにもなっている[,猫じゃらしの女]のヒロイン、上野山下は下谷町2丁目の岡場所・提灯店〔みよしや〕の娼婦およねのもとへ、外神田の経師屋というふれこみで去年(寛政2年 1790)の秋ごろから客として通っていた卯之吉は、じつは型師でもあった。
表の仕事の経師のしごとがらみで富裕な商店へ入りこんでは、蝋のかたまりに錠前のかたちを捺しとり、諸方の盗賊の頭へ高く売るのである。

年齢・容姿:30男。小肥りで色白。
生国:江戸と見たのは、30そこそこで外神田に経師の店をかまえているとすると、親ゆずりにちがいないとふんだから。。

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探索の発端:密偵・伊三次は、〔みよしや〕の娼婦およねとはおなじみである。
(参照: 密偵・伊三次の項)
およねが、きのう卯之吉が預けていった蝋型を伊三次に見たのである。伊三次はすぐに〔小房〕の粂八にきてもらった。案の定、蝋型を受け取りにきた者がいた。すかさず、粂八が尾行(つ)ける。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
卯之吉を監禁したのは、上州・信州を荒らしまわっている〔伊勢野(いせの)〕の甚右衛門一味であった。
(参照: 〔伊勢野〕の甚右衛門の項)
〔伊勢野〕の甚右衛門へ卯之吉を引きあわせたのは、上州・高崎に本拠を置く〔中釘(なかくぎ)〕の三九郎だ。
(参照: 〔中釘〕の三九郎の項)

結末:およねを誘拐にきた3人は、鬼平に捉えられ、新鳥越4丁目の先に荒物屋の店を盗人宿にしていた〔伊勢野〕の甚右衛門一味も、鬼平の指揮する火盗改メに捉えられた。

つぶやき:池波さんのエッセイによると、猫を飼っている銀座の酒場のホステスが、猫じゃらしを1個、これまた猫好きの池波さんに呉れたので、この篇の想がなったと。
こういう好篇を読ませてもらえたぼくたちは、そのホステスに感謝しないといけないな。

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コメント

一つの猫じゃらしから、こんなドラマチックなストーリーが展開するなんて、池波さんって、本当に素晴らしい!

「型師」、これもやはり池波さんの造語ですか?

投稿: みやこのお豊 | 2005.09.04 08:52

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