« 剣友・長沼又兵衛 | トップページ | 〔四木(しもく)〕の房五郎 »

2006.03.02

軍師(ぐんし)・高橋九十郎

『鬼平犯科帳』文庫巻13の巻頭に据えられている[熱海みやげの宝物]は、〔甞帳(なめちょう)〕〔甞役(なめやく)〕といった、池波さん独特の用語が初登場する篇である。
それはともかく、〔高窓(たかまど)〕の久兵衛(70過ぎ)お頭の死に目に会えなかった〔嘗役〕の〔馬蕗(うまぶき)〕の利平治(56,7歳)は、〔高窓〕一味を乗っとった浪人あがりの軍師(ぐんし)格・高橋久十郎派につけ狙われている。利平治が中国道から上方、北陸道へかけて集めた押し込み商店リスト---〔嘗帳〕が目当てなのである。
(参照: 〔高窓〕の久兵衛の項)
(参照: 〔馬蕗〕の利平治の項)
利平治は利平治で、〔高窓〕の2代目にあたる〔布屋(ぬのや)〕久太郎(28歳)の行方を捜して江戸へ向う途中、熱海で骨やすめをしていて、密偵・彦十に出会った。彦十は彦十で、鬼平のお供で、熱海で保養していた。
(参照: 〔布屋〕の久太郎の項)

213

年齢・容姿:40歳前後。5年前から〔高窓〕の軍師格をつとめていて、そりの間に一度だけ、采配をふるったことがある。盗金の運搬から、押し込むまでの手配り、盗賊たちの配置・分担、引き上げ路などを差配して、それはみごとなものであって、久兵衛お頭の信用を一挙にえた。
生国:越前・福井の浪人とだけ。

探索の発端:彦十がかねて顔見知りで気のあった〔馬蕗〕の利平治から、高橋一味に狙われていることを打ち明けられて、鬼平が高橋久十郎を牽制することになった。ついていた配下は彦十のみ。
高橋九十郎のほうは、小田原まで出向いてきていて、万町の息のかかった剣術道場に滞在していることを、彦十がつきとめた。
一方、久栄夫人とともに先立ちした密偵おまさは、藤沢宿で宿役人に頼んで、早飛脚を火盗改メ役宅の佐嶋与力へ発してもらった。

結末:権太坂で利平治を襲ってきた、九十郎の息のかかった浪人3人は鬼平に斬り殪され、〔横川〕の庄八は、彦十と利平治にとりおさえられた。
(参照: 〔横川〕の庄八の項)
高橋九十郎一味は、騎馬でかけつけた佐嶋与力、酒井同心筆頭らに助勢した小田原藩の捕り方に捕縛された。死罪であろう。

つぶやき:この篇の冒頭に、長谷川平蔵程の身分であれば、本陣の[今井半太夫]方に宿泊
するべきだが---といった意味のことが書かれている。
この[今井半太夫]を、池波さんは、『江戸買物独案内』(文政7年 1824刊)から見つけたと推察。「雁皮紙」の製造をしていた。

|

« 剣友・長沼又兵衛 | トップページ | 〔四木(しもく)〕の房五郎 »

119福井県」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 剣友・長沼又兵衛 | トップページ | 〔四木(しもく)〕の房五郎 »