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2005.09.11

〔羽沢(はねざわ)〕の嘉兵衛

『鬼平犯科帳』文庫巻5でタイトルになっている[乞食坊主]こと鬼平の剣友・井関録之助に、南品川の貴船明神社(現・荏原神社  品川区北品川3丁目)境内で盗めの会話を聞かれてしまった、〔古河(こが)〕の富五郎一味の盗人たちは、100両を金策し、録之助殺しを、両国一帯の香具師の元締・〔羽沢(はねざわ)の嘉兵衛へ頼み込んだ。
嘉兵衛は、仕掛人の菅野伊介へいいつけた。ところが、伊介も高杉道場で同門だったために、奇計を案じて、六之助のボロ法衣に犬の血を塗って、首尾をごまかした。

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年齢・容姿:あくまでも蔭の人物扱いなので記述がない。[乞食坊主]の篇は寛政元年(1789)の事件だが、寛政4,5年(1792-3)とおぼしい『闇の狩人』(新潮文庫)では、2年前に没したことになっている。
一方、寛政11年(1799)の事件が描かれる『仕掛人・藤枝梅安』(講談社文庫)の第1話[おんなごろし]では健在。
要するに、年齢不詳。容姿はいかにも香具師の元締風と。
生国:下総(しもうさ)国葛飾郡羽沢(はねさわ)村(埼玉県富士見市羽沢)。
葛飾あたりから江戸へ出てきて、さまざまな闇の仕事に手をそめてのしあがったのであろう。
武蔵(むさし)国橘樹郡羽沢(はさわ)村(現・神奈川県横浜市神奈川区羽沢町)ははずした。

探索の発端;〔古河(こが)〕一味には、録之助の注進によって火盗改メの見張りがついた。
・〔羽沢(はねさ゛わ)の嘉兵衛のほうには、さすがの火盗改メも、いまのところは手を打つすべがない。

結末:古河一味は捕縛されたが、〔羽沢の嘉兵衛には手つかず。

つぶやき:、『仕掛人・藤沢梅安』の第1話[おんなごろし]で、羽沢(はねざわ)の嘉兵衛の依頼で、薬研堀の料亭〔万七〕の先妻おすずを仕掛けたのは32歳のとき、寛政8年(1796)であった。
『闇の狩人』に描かれている年代を推測する唯一の手がかりは、安永元年に刊行された黄表紙『運附太郎左衛門咄』について、「20何年前に発行された」とある箇所がそれ。試算すると寛政4,5年になる。

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