鰻(うなぎ)の辻売り・忠八
『鬼平犯科帳』文庫巻15の[雲竜剣]は、シリーズでは最初の長篇なので、ゆったりと謎が解かれる。小名木(おなぎ)川が大川へそそぎこむその河口に架かる万年橋の南で鰻(うなぎ)の辻売り屋台を出している忠八の名あげたのは、弥勒寺門前の茶店〔笹や〕の女主人・お熊である。
茶店〔笹や〕は、弥勒寺楼門前の板庇の家。
(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
年齢・容姿:32,3歳。容姿の記述はない。
生国:書かれてはいないが、鰻に縁があって、剣客医師・堀本道伯と直接に知り合ったとすると、下野(しもつけ)国都賀郡(とがこうり)牛久(うしく)村(現・茨城県牛久市牛久)あたりと推察。
(参照: 剣客医師・堀本伯道の項)
探索の発端:同心・金子清五郎が殺害される前日、忠八と肩をならべて〔笹おや〕の前を通りずぎたと、お熊が証言したのである。事件とかかわりがある人物が初めて浮きあがった。
しかし、万年橋きげわに彼の姿はなかったのである。
別の線から、忠八が本所の獺(かわうそ)長屋に住み、夜分、深川・佐賀町の足袋問屋〔尾張屋〕へ鰻の櫛焼きを届けたり、下男の彦兵衛と連絡(つなぎ)をつけていることも判明した。
結末:堀本伯道は息子に斬り殺されたが、忠八のことは書かれていない。
つぶやき:[雲竜剣]は、シリーズが始まってから,8年半目に連載がスタートした。池波さんも編集部も、ファンが固定したと読んだのであろう。
もっとも、読み手とすると、毎月の展開をいらいら気味で待ったにちがいない。文庫で読みきれるいまの読者は幸せである。
『鬼平犯科帳』の発生事件の年代順リストは、
http://homepage1.nifty.com/shimizumon/sanko/index.html
の、目次の下から3番目あたりの、年代・季節順を。
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コメント
佐賀町の尾張屋へ顔を見せなくなったのは逃げたわけではなく、腹をこわしていたからという単純なものだったのに驚き。
秋になって久しぶりに読んだ鬼平は長編から。悪くはないけれど、やはり短い方が馴染みやすい。
江戸の各所が切絵図で頭に浮かんでくるのはありがたいことです。
投稿: 豊島のお幾 | 2005.10.27 17:45
長篇にした池波さん、すこし疲れ気味だつたのでは?
短篇のアイデアのタネも、長篇のアイデアのタネも1つは1つですから。
短篇のほうが、凝縮していることは、当然です。
投稿: ちゅうすけ | 2005.10.27 19:08
ご訪問、ありがとうございます(^-^)
すぐ近くに図書館があるので、我が家にない巻の鬼平は、次から次へと図書館に予約攻撃中です(笑)
いずれは全巻を、わたしの本棚に並べて納めたいのですが、いつになることやら…
投稿: おぎさんち | 2005.11.01 23:01