浪人刺客(しかく)・沖源蔵
『鬼平犯科帳』文庫巻8に収められている篇の中では中篇に近い[流星]で、浪人剣客・沖源蔵は、江戸への足がかりを意図している大坂の巨盗〔生駒(いこま)〕の仙右衛門(62歳)の命を受け、隠れ家にしていた京都の油小路二条下ルの研師〔笹屋〕から、江戸へ向う。
(参照: 〔生駒〕の仙右衛門の項)
同僚は、やはり浪人剣客の杉浦要次郎(やや年少)。25両ずつの仕掛け金を〔生駒〕の仙右衛門からもらっている。
(参照: 浪人刺客・杉浦要次郎の項)
江戸での隠れ家は、豊島郡染井村の植木屋〔植半〕の小屋。
年齢・容姿:40をこえている。ひろい肩幅、がっしりとして体躯。
生国:山城(やましろ)国(現・京都府)のどこかと判ずる。研師〔笹屋〕弥右衛門の縁者とおもえるからである。研師のような職業は、大きな都会か大藩の城下町でなくてはやっていけまい。
探索の発端:刺客の沖源蔵が惨殺した長谷川組の同心・原田一之助の妻女・きよ、先手の山本伊予守組の木下同心などにより、火盗改メの必死の探索が始まった。
一方、同僚の杉浦要次郎のたっての希望で、2人は登城途中の鬼平の姿を、3か月前に先発し、江戸の盗賊の頭領〔鹿山(しかやま)〕の市之助(年齢不詳)との連絡役をつとめている〔津村(つむら)〕の喜平から指さされた。
(参照: 〔鹿山の市之助の項)
(参照: 〔津村〕喜平の項)
結末:巣鴨の庚申塚の立場で鬼平を見かけた2人は、板橋宿の裏道で乗馬している鬼平へ斬りかかったが、逆に2人とも深傷をおい、捕縛された。磔刑であろう。
巣鴨 庚申塚立場(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
つぶやき:沖源蔵や杉浦要次郎のよう浪人剣客は、いってみれば、置き換えのきく点景的な登場人物である。
それを、沖の場合は、「京都の油小路二条下ルの研師〔笹屋]弥右衛門」の家に寄宿、杉浦要次郎は「河内(かわち)国茨田郡(まんだこおり)・枚方(ひらかた)の町外れの船頭・村五郎」のところに寄宿---と微にいった説明をつけ加えているのは、物語にリアリティをもたせたいとかんがえている池波さん得意の手法である。
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