盗賊剣客(けんかく)・堀本虎太郎
『鬼平犯科帳』文庫巻15は、このシリーズ初めての長篇[雲竜剣]にあてられている。相手役は剣客(けんかく)医師の堀本伯道で、〔雲竜剣〕と名づけられた不思議な剣法を遣う。
(参照: 剣客医師・堀本伯道の項)
ところが、鬼平は、ある夜、金杉川の南岸で、〔雲竜剣〕を遣う曲者に襲われた。
そのときの追い詰められた印象は、夢にまででてくるほど強烈であった。
そのころ、火盗改メの同心・片山慶次郎と金子清五郎が暗殺された。中でも、片山同心の胸の斬り傷は、かつて銕三郎(鬼平の家督前の名前)が、恩師・高杉銀平に見せられた刀傷跡と同じ刀法によるもまであった。
嫌疑は、堀本伯道へかかったが、高杉師が伯道と真剣勝負をしたのは35年ほども前のこと、とすると闇討ちの主は70歳を超えていることになるが、金杉川のそれは40歳そこそこに見えたのだ。
年齢・容姿:40歳そこそこ。背丈が高い。筋骨尋常。
生国:備前(びぜん)国御前郡(みまえこおり)伊福村(現・岡山県岡山市伊福町)。
篇中で堀本虎太郎は、「備中岡山出身の医師」(p336 新装版p348)と名乗っているが、岡山なら備前のほうがいいかも。
生母おせきは女賊で、伯道を盗みの道へみちびき、のち、伯道によって成敗された。虎太郎の剣は、父・伯道仕込みである。
おせきの兄・松蔵は、3年前に、虎太郎が住んでいる根岸の寮へ、伯道が寮番として送りこんだ。
探索の発端:西久保町の京扇店[ 平野屋]の番頭・茂兵衛が、近江・八日市村の鍵師・助治郎が訪れてきたとの密告してきた。鍵師・助治郎を尾行することで、背後に剣客医師・堀本伯道の影が見えてきた。深川の足袋問屋〔尾張屋〕が標的らしい。
(参照: 鍵師・助治郎の項)
(参照: 〔馬伏〕の茂兵衛の項)
伯道の足跡をたどるうちに、丸子の剣術道場が割れ、浪人たちを尾行(つ)けることによって、根岸の寮が浮かびあがった。
牛込・若松町の薬種店〔長崎屋〕を襲って一家を惨殺して金を奪ったのも、虎太郎一味の所業と知れた。
結末:伯道は、盗人宿にしている根岸の寮で虎太郎を成敗しようとして、逆に斬られた。対決を、鬼平が引き継いだ。虎太郎の喉もとに血が走った。
つぶやき:この長篇は、『オール讀物』1976年7月号から翌年新年号までの7回にわたって連載された。
『鬼平犯科帳』はいわゆる読切短篇の連鎖形式のシリーズだったが、始まって13年目、ファンもすっかり固定しているというので、長篇の分載---というより、構成を検討してみると、書いているうちに分載長篇になってしまった気味がある。
それにしても、達者なものだ、というのが本当のところの、つぶやき。
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