〔船明(ふなぎら)〕の鳥平
『鬼平犯科帳』文庫巻11の冒頭の[男色一本饂飩]事件の主人公・寺内武兵衛は、表向きは〔算者指南〕を掲げた経営コンサルタントだが、裏の顔は、出入りの商店から得た情報を盗みに使っている。
(参照: 浪人・竹内武兵衛の項)
と同時に、男色家でもあり、木村忠吾に魅力を感じて、火盗改メの同心とも知らず誘拐してしまう。
忠吾の姿を最期に見たのが、深川・海福寺門前の一本饂飩の〔豊島屋〕の女中のお静(年増)である。鬼平は、このお静を囮にして、竹内武兵衛をおびきだすことにした。
〔船明(ふなぎら)〕の鳥平は、いまは、竹内武兵衛と組んでいる、いっぽうの、ちっぽけな盗賊集団の頭である。
年齢・容姿:どちらも記述がない。
生国:遠江(とおとうみ)国豊田郡(とよだこおり)船明(ふなぎら)村(現・静岡県浜松市船明)。
探索の発端:武兵衛は、囮のお静を気絶させ、老僕・吉六に背負わせて行かせた。その吉六がかけつけた先が、鉄砲洲川の船着き場の、〔船明〕の鳥平の盗人宿だった。
で、尾行していた沢田小平次たちに捕縛された。
結末:竹内武兵衛は鬼平に斬りかかって逆に殺されたが、あとの一味の処刑は記述がない。
幽閉されていた忠吾が純潔(?)を守りとおしたと力説するのみ。
つぶやき:池波さんの作品には、周囲か知りあいにその道の人でもいたかとおもうほど、男色者が登場する物語が少ないとはいえない。
むろん、そういう詮索は作品鑑賞の本筋から遠くはずれていることで、小説読みの醍醐味は、作品に徹して楽しむところにあることはいうまでもない。
それはそれとして、「船明」という地名に引かれて、天竜川を遡り、当時の天竜市船明を訪れた。いまは、船明ダムが築かれていた。
天竜川を堰きとめた船明ダム
〔船明〕の鳥平の盗人宿を鉄砲洲川の船着き場に置いた池波さんが同地を訪れたのは、ダムで川が堰きとめられる前で、天竜下だりの船頭や木遣り師が多くいたころだったのかもしれない。
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コメント
昨年の12月20日から始まった「盗人探索日録」丁度今日で一周年、おめでとうございます。
この記念すべき日に登場する盗人は「誰?」と
楽しみにしておりました.
このブログを読むのを毎朝一番の日課にしておりました。
あっという間に一年が過ぎたように思いますが、
先生のご苦労はたいへんだったと思います。
他に例を見ない貴重なブログこれからも楽しみにしております。
そして先生のご健康をお祈りしておlります。
投稿: みやこのお豊 | 2005.12.20 12:37
ブログオープン一周年おめでとうございます。何でも361人の盗人が登場したそうな。みやこのお豊さんの投稿どおり、物凄く大変だったと思います。
我々も見習わなければいけないエネルギー。
アチャコチャ忙しいなどと言っておれませんね。
それにしてもギルモアのブログの本は参考になりました。このブログも成長を続けたいですね。
投稿: ヌマピー | 2005.12.21 14:23