〔名草(なぐさ)〕の与八
『鬼平犯科帳』文庫巻18に収録の[一寸の虫]で、血なまぐさい盗めをする盗人〔鹿谷(しかだに)〕の伴助(中年)は、自分が盗人の掟を破ったために、本格派のかつてのお頭〔船影(ふなかげ)〕の忠兵衛(50がらみ)からうけた仕置きへの恨みを忘れていなかった。
(参照: 〔鹿谷〕の伴助の項)
(参照: 〔船影(ふなかげ)〕の忠兵衛 の項)
密偵・仁三郎は、一本うどんの〔豊島屋〕でかつて同僚だった伴助に声をかけられ、行状をさぐるために仕返しの犯行に加わることを承知、一味の〔名草(やぐさ)〕の与八らに引きあわされた。
仕返し犯行とは、忠兵衛の娘おみの(24歳)が嫁いでいる本銀町の菓子舗〔橘屋〕を襲うこと。六造という男を引き込みに入れてもいた。
年齢・容姿:中年。容姿の記述はない。
生国:伊勢(いせ)国三重郡(みえこおり)名草村(三重県三重郡楠町北五味塚)。
現在は北五味塚に併合されていると推察しているが、もしかしたら吉崎かも知れない。地元の鬼平ファンの方のご教示を俟つ。
探索の発端:本銀町の菓子舗〔橘屋〕をそれとなく伺っている初老の男に気づいた鬼平が、同心・松永弥四郎に尾行(つ)けさせ、湯島天神下の菓子舗〔柳屋〕へ入ったのをつきとめた。〔橘屋〕の内儀おみのの実家である。そこから、〔船影〕の忠兵衛がわりだされ、〔橘屋〕が見張られることになった。
結末:〔船影〕の忠兵衛を売ることはできないと、仁三郎は押し入りの場で伴助を刺殺ののち、自裁して果て、〔名草〕の与八は、そのときに捕まった。
[船影〕の忠兵衛は、一味が押し入ろうとして南茅場町の水油問屋〔岡田屋〕で23名が逮捕された。
つぶやき:上から同じように叱られても、それを根に持つ男と、逆に叱正をありがたがって人生の軌道修正の資とする男の違いを描く。
その違いは、天生の素質の違いなのか、それとも、人生体験の差からくるものなのか。ぼくには、後者のようにおもえるのだが。
人生体験の差---謙虚ということを学んだ男と、学びそこなった者の差ともいえようか。
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コメント
.>上から同じように叱られても、それを根に持つ男と、逆に叱正をありがたがって人生の軌道修正の資とする男.
その違いは私も管理者さんと同じで、人生経験の差から来ると思います。
信頼できる人に出会えなかったんですね。
だから謙虚になれないのでしょう。
最近はすぐに切れて刺されたりするので、真に
叱正をしてくれる上司も少ないのでは・・・・・
投稿: みやこのお豊 | 2006.03.07 01:10
やはり、出会った人から何をどう学ぶかですよね。
投稿: ちゅうすけ | 2006.03.12 13:16