〔女掏摸(めんびき)〕お富
『鬼平犯科帳』文庫巻2に収録されている[女掏摸お富]の女主人公が、元掏摸(すり)で、いまは巣鴨追分の笠屋の女房におさまっているお富である。亭主は卯吉(21歳)。
年齢・容姿:22歳。やわらかい躰つきの町女房風だが、掏摸(しごと)にかかるときは鼻の頭に小豆大のつけ黒子(ぼくろ)する。
生国:捨て子なので、厳密にいうと生国は不明だが、掏摸の元締の〔霞(かすみ)〕の定五郎夫婦に拾われたのが江戸のどこかなので、江戸生まれということに。
探索の発端:従兄の三沢仙右衛門と王子権現へ参詣に出かけた鬼平は、俵坂を下ったところで黒子をつけたお富とで出会った。
王子権現(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
ふだんの顔には黒子などない、とお富の店をよく知っている仙右衛門が断言した。
鬼平は、前日役宅へやってきた日本橋・鉄砲町の御用聞き・文治郎から、鼻の頭に黒子のある女掏摸の話を聞いたばかりであった。
看視がお富へ注がれた。
お富は、かつての仲間の〔岸根(きしね)〕の七五三造(しめぞう)に前身を黙っていてほしかったら100両つくれといわれて、掏摸にはげんでいたのだった。
結末:100両は稼ぎおわって七五三造へ渡したものの、よみがえった指先の感触に辛抱たまらず、市ヶ谷八幡宮で掏ったところで鬼平に捕まり、しばらく入牢。
市ヶ谷八幡宮(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
つぶやき:池波さんには、この篇のほかにも、掏摸を主人公にした独立短篇がある。年代順はまだ調べていない。
掏摸ものは、江戸時代ものの定番ではあるが、掏摸の生態が長谷川伸師ゆずりかどうかも、ついでに調べたい。
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