〔天弓(てんきゅう)〕の政五郎
『鬼平犯科帳』文庫巻5に収録の[山吹屋お勝]のヒロインはタイトルどおりお勝だが、彼女の本名おしのといい、女盗人。
(参照: 〔山吹屋(やまぶきや)〕お勝 の項)
おしのの父親も、〔天弓(てんきゅう)〕の政五郎という盗賊で、錠前はずしの名人級の腕をもち、〔夜兎(ようさぎ)の角右衛門〕の一味にいた。
(参照: 〔夜兎(ようさぎ)〕の角右衛門 の項)
おしのも父親につづいて角右衛門の配下だったが、〔蓑火(みのひ)〕の喜之助のところから移ってきた〔関宿(せきやど)〕の利八とでき、おしのは〔蓑火〕に引きとられて命びろいしたのであった。
(参照: 〔蓑火(みのひ)の喜之助 の項〕)
(参照: 〔関宿(せきやど)〕の利八 の項)
年齢・容姿:どちらの記述もないが、もし生きていれば70歳前後か。おしのが〔夜兎〕一味へ加わっているところから推理するに、だいぶ以前に亡くなっていたろう。
生国:おしのが生まれたのが備前・岡山というから、そこらあたりとしておく。
<通り名の由来:「天弓」とは虹のこと、とある。たしかに、弓なりに五彩の橋が天空かかる。それほど鮮やかな手練で、しかも虹のようにすっーと消えていくことから、つけられたのであろう。
つぶやき:ここで特記するまでもなく、池波さん自選のベスト5の篇の一つが[山吹屋お勝]である。おしのと利八の中年男女ラブ・ロマンスとしてではなく、お勝が鬼平の手をかわした思いつきが、池波さんご自慢のものなのであろう。
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