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2006.03.10

仏絵師(ぶつえし)・細金小五郎

『鬼平犯科帳』文庫巻12に収録されている[高杉道場・三羽烏]に登場して、物語に艶っぽさを添えているのが〔砂蟹(すなかに)〕のおけい(40女)だが、その亭主に設定されているのが、仏絵師(ぶつえし)という一風変わった職業の男・細金小五郎である。
(参照: 〔砂蟹〕のおけいの項)
細金小五郎名義で家を借りているが、当の小五郎はいっかな姿を見せないばかりかち、どういう盗人かも、まるで池波さんが放念したように、書かれない。借りた家は、日本橋・高砂町の菓子舗〔恵比寿屋〕の持ち家で、細い路地の突きあたりの、瀟洒な二階屋である。
おけいのみごとな色事の相手は、名古屋の役者くずれの〔笠倉(かさくら)〕の太平(40がらみ)。
(参照: 〔笠倉〕の太平の項)
太平を剣友盗賊・長沼又兵衛一味に引き入れるための濡れ場(?)というより、おけいはそのこと自体を楽しんでいる。亭主ということになっている小五郎はどうおもっているか書かれない。
(参照: 剣友・長沼又兵衛の項)

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探索の発端:〔小房〕の粂八が預かっている船宿〔鶴や〕へあらわれたおけいを、粂八は〔野槌〕の弥兵衛一味にいたとき見知っていた。尾行して、日本橋・住吉町の路地の奥まったところにある住まいを見つけた。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
さっそく、路地の出口にある筆・墨・硯の商舗〔木屋〕の裏二階の一と間に見張り所が設けられたが、細金小五郎の姿は依然として現れない。

結末:押し込み先の巣鴨の徳善寺(架空)で長沼又兵衛は惨殺、〔笠倉〕の太平は捕縛、おけいも住吉町の二階家で捕まったが、小五郎については書かれていない。

つぶやき:ただ単に見張り所として部屋を貸しただけの〔木屋〕について、「店舗は小さいが、扱う品物は筆にしろ硯・墨にしろ、最高級のものばかりで、京都から直接仕入れをした物が多く、顧客の中には大名も旗本もいるという」と、わざわざ注釈している。
池波さんの頭には、室町の塗物の〔木屋〕があったのではなかろうか。大正の震災で消えた大老舗で、暖簾分けされた打物の〔木屋〕は現在も盛業中。
2600
鬼平のころには「室町につらなる木屋の紺暖簾」とはやされたほど、木屋の分店は多かった。住吉町の〔木屋〕も前2店と同様に『江戸買物独案内』に広告を出している。

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