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2006.03.14

〔天竜(てんりゅう)〕の岩五郎

『鬼平犯科帳』文庫巻12に入っている[二人女房]で、深川の大島町の飛び地におときと妾宅をかまえている首魁が〔彦島(ひこじま)〕の仙右衛門(55,6歳)である。
(参照: 〔彦島〕の仙右衛門の項)
この仙右衛門の片腕だったのが〔天竜(てんりゅう)〕の岩五郎だ。
そう、だった。この夏---寛政7年(1795)に病死していたのである。
生前は、仙右衛門が一ト仕事終えて江戸や京都や温泉で骨休めをするとき、ぴったりとくっついていた。

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年齢・容姿:62歳---というから、当時としては、まあまあ生きたほうかも。容姿についての記述はない。
生国:遠江(とおとうみ)国豊田郡(とよだこおり)天竜村(現・静岡県浜松市天竜・鹿島)

事件の経緯:〔彦島〕の仙右衛門が江戸・深川の大島・飛び地に妾おとき(27歳)を囲っていることを、大坂にいる本妻お増(40過ぎ)に告げたのが、岩五郎だと、小悪党で仙右衛門の嘗役もやっている〔加賀(かが)屋〕佐吉(35,6歳)はいう。もちろん、佐吉のつくりごとである。お増が50両で仙右衛門を殺してくれと頼まれたともでまかせを口にした。
それを本気にした仙右衛門は、50両でお増の始末を、佐吉に頼む。

結末:なんのことはない、佐吉が高木軍兵衛にもちかけた話は、鬼平につつぬけになっていて、仙右衛門、佐吉とも御用。

つぶやき:仙右衛門を刺殺することになった軍兵衛が泊まった夜、地響きのように家がゆれた。大男の仙右衛門と搗きたての臼の中の餅のようなおときの愛の営みが始まったのである。
いや、笑わないではいられない。池波さんの読者サーヴィスもこれほどとは。

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