〔彦島(ひこじま)〕の仙右衛門
『鬼平犯科帳』文庫巻12に入っている[二人女房]で、深川の大島町の飛び地におときと妾宅をかまえている首魁。上方から尾張、駿河のあたりをテリトリーとしている。
年齢・容姿:55,6歳。でっぷりと肥えた「蟇(がま)が相撲取りになったような」大男。鼻のまわりや額にいぼが10個ほど。醜怪だがなんとも憎めないのは、人のよさゆえか。
生国:遠江(とおとうみ)国山名郡(やまなごおり)彦島村(現・静岡県袋井市彦島)
探索の発端:[〔加賀屋(かがや)〕の佐吉]のところでも書いたが、酢醤油問屋〔佐野倉〕の用心棒をしている高木軍兵衛を誘いこんだ佐吉が、〔彦島(ひこじま)〕の仙右衛門の殺害を企てる。佐吉は大坂にいる仙右衛門の本妻おますとできていた。
(参照: 〔加賀屋〕の佐吉の項)
佐吉のそのたくらみは、軍兵衛によって逐一、鬼平の耳へ入れられていた。
結末:佐吉は、このが首尾よく運んだあと、報酬を払わなくてもいいように軍兵衛の殺害を不逞浪人たちに請け負わせたが、鬼平によって逮捕された。
つぶやき:地名の「彦島」は、吉田東伍博士『大日本知名辞書』には収録されていない。池波さんは、どこで磐田市と接しているここをを知ったかだが、徳川軍と武田軍がしばしば矛をまじえた地区でもある。「忍者もの」の現地取材をしたときに見覚えたのであろう。
JR東海道線・袋井駅を出た下りの電車が、ほんの1,2分で原野谷川(はらのやがわ)をわたってすぐに通過する町が「彦島」である。
見附(みつけ)の合戦、〔馬伏(まむし)塚城〕の攻防、高天神城の戦い---若大将だった家康は、このあたりを軍馬でいくたび踏んだことか。
(参照: 〔馬伏〕の茂兵衛の項)
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コメント
生国が明らかになった盗人の数、今日現在で、あわせて120人です。
うち、江戸と静岡県がそれぞれ11人ずつで最多。これって、なにかの意味を示しているのでしょうか?
投稿: 目黒の朋子 | 2005.04.10 19:02
>目黒の朋子さん
よく見ていただいてい、ありがとうございます。
盗人の出生地を県別に明らかにすることも、このリポートの目的の一つでした。
今日までの、
11人----江戸、静岡県
9人-----滋賀県、愛知県
7人-----三重県
こうして上位5都県をあげますと、池波さんがなにに興味をおもちだったが、見えてきませんか。
江戸は別格として、静岡県の家康、今川義元、武田信玄。
滋賀県の姉川の戦いと甲賀衆。
愛知県の信長。
三重県の伊賀忍者。
あとを予想すると、新潟県の上杉謙信。
山梨県の武田信玄。
長野県の真田一族。
京都の新撰組。
冨山県の自身のご先祖など。
当たるも八卦、当たらぬも八卦です。
投稿: ちゅうすけ | 2005.04.10 19:18