〔加賀屋(かがや)〕佐吉
『鬼平犯科帳』文庫巻12におさめられている[二人女房]で、初めて〔甞役(なめやく)〕という盗賊組織の中の特殊な役柄で登場(池波さんは、たぶん、この篇の執筆中にこの〔甞役}という役柄をおもいついたのであろう。次の[熱海みやげの宝物]でも、〔甞役・馬蕗]の佐平治を創造している) 。
佐吉は、首領〔彦島(ひこじま)〕の仙右衛門のために、あちこちの資産家の家々を〔甞〕めながら掏摸をはたらき、道中師---胡麻(ごま)の灰も兼ねている。
年齢・容姿:35,6歳。小さく、ほっそりした躰つき。あごと鼻がとがった小顔。まなじりが深く切れこんだ両眼。大きな耳たぶ。
生国:三河(みかわ)国碧海郡(あおみこおり)今岡村(現・愛知県刈谷市今岡町)。父親は博労で〔彦島(ひこじま)〕の仙右衛門の盗人宿を兼ねていたこともあったので、佐吉も自然に〔彦島〕一味に加わった。
探索の発端: 酢醤油問屋〔佐野倉〕の用心棒をしている高木軍兵衛を、本所ニッ目・弥勒寺の楼門下から手招きしたのが〔加賀屋〕佐吉だった。人殺しの仕事があるという。
二人は、1年半前まで、恐喝でいっしょに稼いでいた仲だったが、佐吉の得体の知れなさに、軍兵衛は別れたのだった。
佐吉のたくらみは、軍兵衛から、即座に鬼平の身へ入れられた。
結末:いつわりの殺しを演じた軍兵衛を、あろうことか、佐吉は不逞浪人たちに襲わせる手配をしていた。しかし、見抜いた鬼平に、浪人たちは斬られ、佐吉と仙右衛門は捕縛された。
白州で対決した仙右衛門は、自分を殺そうとしたのが、大坂にいる女房お増で、仙右衛門が江戸で囲ったおときを嫉妬してのたくらみだったと知る。おときのことをお増に告げ口したのは佐吉で、しかも佐吉とお増はできていた。
つぶやき:不倫の告げ口は、『オセロ』の昔からとんでもない決着を招く。だから不倫小説は、つぎからつぎへと書かれる。
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コメント
「二兎を追う者は一兎も得ず」の喩え通り、
結局佐吉も仙右衛門も欲はかなわず、
捕縛されてしまったのですから。
この先したたかに生きていくのは
お増のような気がいたします。
投稿: みやこのお豊 | 2005.04.13 22:30