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2006.04.05

佐嶋忠介の印象の形成(その2)

(つづき)

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佐嶋忠介を通じて、おまさに手当をあたえ、連絡(つなぎ)の方法もめんみつに打ち合せさせた。[4―4 血闘]p139 新装p146

「長官(おかしら)!」
捕手をひきいて、与力・佐嶋忠介が駈け寄った。
「佐嶋か……よく間に合うた」
「はっ……」
「それにしても、おそすぎる。いま一歩、おくれたら、おれはこの世にいなかったぞ」
「おそり入り……」[血闘]p157 新装p165

(おまさがおみねのお目こぼしを願ったので)すぐさま平蔵は、与力・佐嶋忠介をよびよせ、おまさを加えて策を練った。[4―6 おみね徳次郎]p218 新装p229

或朝。居間の庭に咲いている木槿(むくげ)の花をながめつつ、長谷川平蔵が茶を喫していると、庭へ、佐嶋忠介が入ってきた。
「お、佐嶋。おみねはどうしている?」
「あきらめきっております故か、元気も出てまいりました」
「気をつけるのだな、佐嶋」
「は……?」
「元気が出るとあの女、取調べのおぬしへ色目をつかうやも知れぬ」
「御冗談を……」[おみね徳次郎]p234 新装p245

「女という生きものは、みな一色(ひといろ)のようでいて、これがちがう。女に男なみの仕事をさせたときにちがってくるのだ。もっとも盗みの仕事ではないがな」
「はい」
「老巧なおぬしも、只ひとつ、女には疎(うと)いなぁ」
「おそれ入りました。まったく、その通りで……」[おみね徳次郎]p235 新装p246

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捕らえた五郎蔵をわざと逃亡させたのは、ほかならぬ平蔵で、このことを知るものは与力(よりき)の佐嶋忠介、同心・酒井、竹内など、ふだんから密偵たちとの交渉が多い人びとにかぎられた。[5―1 深川・千鳥橋]p21 新装p21

(木村忠吾につかみかかった田中貞四郎を)与力・佐嶋忠介がなだめた。[5-7 鈍牛]p255 新装p268

平蔵の手紙を南町奉行・池田筑後守長恵へ届ける。[鈍牛]p264 新装p278

「まことにもって、このたびは、われら一同の……」
 与力・佐嶋忠介が一同を代表して両手をつき、わびをいいかけると、長谷川平蔵は佐嶋の声を、
「よせ」
 とさえぎり、
「辞めずにすんだよ」[鈍牛]p285 新装p299

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「長谷川様も私も、どのようなことを耳にしたとて、決して他(ほか)へもらすようなことはありませぬゆえ、申されにくいことも、はっきりといっていただきたい」[6―1 礼金二百両]p26 新装p27

「女の移り香というものは、なかなか落ちぬものだな」
謹厳な佐嶋が、冗談をいったのは、はじめて。[礼金二百両]p26 新装p27

佐嶋が、ずっしりと重い二百両の包みをさし出すと、
「よし。これで当分は、泥棒どもをつかまえるための費用(ついえ)に困らぬな」
「はい」
「このようなことを、あえてするおれを……おぬしの御頭を、おぬしは何とおもうな?」
「は……」
佐嶋忠介は、ついにたまりかね、両手で顔をおおやった。
「泣くな、佐嶋……」[礼金二百両]p38 新装p40

与力・佐嶋忠介が指揮する一隊が千住・荒川岸の足袋師・留吉の家を包囲。[6―3 剣客]p104 新装p110

「もしやして、その女巡礼なるものは、狐火一味の引き込みをつとめたのではございますまいか。行き倒れの身を一夜、山田屋の世話になり、夜ふけに起き出し、内から戸を開けて一味を誘いこむという……」
と、与力の佐嶋忠介がいうのへ、平蔵はうなずいて見せ、
「おまさをさがしてまいれ。忠吾が行け」[6―4 狐火]p129 新装p136

粂八が帰って行くのと入れちがいに、与力・佐嶋忠介が何かの報告にあらわれ、
「粂八が、よくまいりますが、何か特別な探索でも?」[6―5 大川の隠居]p201 新装p212

「馬を飛ばして大宮へ行け。萩原宗順とおよしをつれもどせ」
すぐさま、与力・佐嶋に、沢田小平次をつけ、大宮の油屋へ急行せしめた。[6―7 のっそり医者]p278 新装p290

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寝所から起きあらわれた長谷川平蔵が、いきなり、当直の与力・佐嶋忠介を呼びよせ、
「雑司ヶ谷の鬼子母神の本堂の床下を洗って見よ。もしやすると、白峰の太四郎の隠居金が見つかるやも知れぬ」
というではないか。
おどろいた佐嶋が、
「あの、去年の……?」
「そうだ」
「ようおわかりになりましてございますな」
「うむ……ま、行って見よ」
そこで佐嶋忠介が配下を引きつれ、鬼子母神へおもむき、二日にわたって本堂の床下をさぐってみたところ、なんと、本堂・北端の床下の敷石のずれた箇所を発見し、この下を掘り起こして見ると、鉄ぶちの木箱があらわれた。
ふたを叩きこわすと、中には、蝋で密封されたもう一つの木箱が出て来て、この中に七百両の小判がおさめられたいたのである。これには、平蔵のやり口に馴れている佐嶋忠介も、
「いやどうも、御頭は、おそろしい御方だ」
おもわず、身ぶるいが出たという。[7―2 隠居金七百両]p72 新装p75

そのころ……。
長谷川平蔵は、老巧のの与力・佐嶋忠介を居間へまねき、酒の相手をさせている。
庭に夕闇が淡くたちこめ、生垣の枸橘(からたち)が白い花をつけて、その香りが居間にまでただよってくるかのようであった。
「佐嶋。あの万屋小兵衛をなんとおもうな?」
「いえ、みなみなとも語り合うて、おどろいております」
「どのようにおどろいた?」
「常の商人(あきんど)とはおもえぬ肝のふとさにて、よう、あれだけのはたらきを……」
「それは、常の商人ではないからだ」
「なんとおせられます?」
「あの爺いが、まともに友蔵と打ち合えるものか。つまり、前々からしかるべく、友蔵を見張り、じゅうぶんの支度をととのえていたのさ」
「ははあ……?」
「ふ、ふふ……おれがにらんだところ、あの小兵衛も、たたけば埃が出ようよ」[7―3 はさみ撃ち]p107 新装p113

平蔵は沢田同心を、報告に来た伊三次につけて砂村新田へやり、すぐさま、手配にかかり、みずから与力・佐嶋忠介と密偵・相模の彦十をつれ、これも密偵の小房の粂八が経営する舟宿〔鶴や〕へ、日暮れ前から、出張(*でば)っていたのである。[7―4 掻堀のおけい]p133 新装p140

南新堀町一帯へも平蔵自身が微行巡回したり、与力・佐嶋忠介をはじめ、粂八・伊三次・おまさなど選(よ)りすぐった密偵の眼を絶えず光らせているのだけれども、どうにもこうにも、雲をつかむようなことになってしまっていた。[7―5 泥鰌の和助始末]p183 新装p191

「ふうむ……近ごろ、めずらしく、本格の盗(つと)めをしたようだな」
すぐには、何の手がかりもつかめぬと知ったとき、長谷川平蔵は、与力の佐嶋忠介へ、
「こうなれば、由松・お粂の父娘(おやこ)を洗うよりほかに道はあるまい。もっとも、その二人、まことの父娘ともおもえぬが、な」
と、いった。
佐嶋も同感である。
(これはもう、どうにも仕方がございませんな)
といった表情が、佐嶋の面上にただよっていた。[7―7 盗賊婚礼]p251 新装p263

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ここでまた平蔵は、粂八と二人きりで、ひそひそと相談をかわし、
「このことは、佐嶋忠介とお前のみに知らせておく。なればくれぐれも、隠密の連絡(つなぎ)にぬかりのないようにな」
「はい。合点(がってん)でございます」
この夜、平蔵は駕籠(かご)をよんでもらい、清水門外の役宅へ帰って行った。
翌朝。
平蔵は、与力、佐嶋忠介を居間へよび、二人だけで、かなり長い間語り合っていた。[8―1 用心棒]p34 新装p36

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コメント

今気がつきました。先生がお使いになる「ちゅうすけ」のハンドルネームは佐島忠介に因んでいるのですね。
実に迂闊でした。

ちょっと不思議に思うのは池波さんは佐島忠介の家庭には全く触れてない事です。

奥さんのこと、子供のことなど全然書いてません。
意識して書かなかったのでしょうか。
もしそうならば何故なのでしょう。

投稿: 靖酔 | 2006.04.05 20:55

靖酔さんの鋭い洞察力に感服しました。

 私は単に先生のファーストネームから付けたと思っていました。

 娘のmixyからの「ちゅうすけ」様をぞいています。

 『who's who』は復習でもあり、新たな発見でもあります。

 毎日が楽しみです。

投稿: 大島の章 | 2006.04.06 00:04

>靖酔さん、大島の章さん 

〔鶴(たづがね)〕の忠助という線も、なきにしもあらず。

投稿: ちゅうすけ | 2006.04.06 08:55

ハンドルネームの「ちゅうすけ」は、
「忠久」「忠介」「忠助」「忠吾」

ぜんぶに引っ掛けての、西尾先生の遊び心だと
思っていましたが。

投稿: おっぺこと那の津のお加代 | 2006.04.06 13:43

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