『御仕置例類集』より(3)
長谷川平蔵名で、幕府評定所へ量刑をうかがった伺い状を紹介している。
○盗み (天明八年) 三番
浅草平右衛門町 幸七店 清六 きっと叱り
清六は、義母と同郷というよしみだけで、素性もたしかめずに無宿・新蔵と岩蔵から頼まれたので両人を止宿させた。そのとき、両人が衣類3品を盗んで質入したことを聞きながら、届け出ず、内々に取り戻してすましてしまったのは不埒であるから、きっと叱りの処分にいたしたい。
裁決---伺いのとおり。
○盗み (天明八年) 三番
浅草復井町一丁目 幸七店 清兵衛後家 くら きっと叱り
くらは、新蔵と岩蔵のもっていたものを盗品の出所もたださずに、同店の新助に頼んで質入してやったが、同所ニ丁目・兵助店(?)・清六が盗品と気づいて返したとはいえ、届け出なかったのは不埒、きっと叱りとしたい。
裁決---質入れについては伺いどおりの量刑でいいが、無宿・岩蔵に見張りもつけないで取りにがしたことは、過料銭三百文。
つぶやき:
どちらも不注意の結果とみたい。
罰金の300文は、1文を25円とみると7500円前後。くらの1日分の稼ぎ高かなあ。
注目したいのは、盗みの張本人の岩蔵は巧みに逃げて、タイトルには「無宿岩蔵、盗みいたし候一件」とあるのに、主犯の訴状・裁決文がないこと。長谷川組にも疎漏はあるのである。
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