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2006.07.19

盗人用語

(篇順)

用語が執筆順につくられていった過程を並べて、考察・推理してみるのも、ファンとすれば『鬼平犯科帳』研究の一つの楽しみであろう。


真(まこと)の盗賊のモラル
 一、盗まれて難儀するものへは、手を出さぬこと。
 一、つとめ(ヽヽヽ)をするとき、人を殺傷せぬこと。
 一、女を手ごめ(ヽヽヽ)にせぬこと。
           [1-4 浅草・御厩河岸]p131 新p138
仕事(つとめ)   [1-4 浅草・御厩河岸]p139 新p147

狗 (いぬ)      [1-1 唖の十蔵]p10 新p10
勘ばたらき     [1-1 唖の十蔵]p21 新p22
手びき        [1-1 唖の十蔵]p22 新p23
急ぎ盗 (ばたらき) [1-3 血頭の丹兵衛]p90 新p95
急ぎ仕事      [1-3 血頭の丹兵衛]p106 新p111
お盗(つとめ)    [1-3 血頭の丹兵衛]p106 新p112
かための盃     [1-3 血頭の丹兵衛]p113 新p118
盗賊宿       [1-5 老盗の夢]p157 新p167
(つとめ)ざかり [1-5 老盗の夢]p166 新p176
鼠盗(ねずみばたらき)[1-5 老盗の夢]p168 新p177
遠国盗 (おんごくづとめ)[1-5 老盗の夢]p169 新p179
急場の盗(つとめ) [1-5 老盗の夢]p170 新p180
つとめやすみ    [1-5 老盗の夢]p174 新p184
お盗 (おつとめ)   [1-5 老盗の夢]p174 新p184
泥棒稼業 (しらなみ)[1-5 老盗の夢]p175 新p185
(おつとめ)    [1-5 老盗の夢]p178 新p188
盗金 (つとめがね)  [1-5 老盗の夢]p180 新p191
貸しばたらき     [1-7 座頭と猿]p235 新p249
色事(いろごと)さわぎ[1-7 座頭と猿]p239 新p253

おさめ金(がね))  [2-6 お雪の乳房]p235 新p247
(いそ)ぎ盗(ばたらき)[2-6 お雪の乳房]p236 新p249

首領(かしら)    [3-2 盗法秘伝]p52 新p55
盗人宿(ぬすっとやど)[3-2 盗法秘伝]p66 新p69
お目あて細見    [3-2 盗法秘伝]p67 新p71
女盗(にょとう)   [3-3 艶婦の毒]p106 新p112

引きこみ       [4-2 五年目の客]p51 新p53
ならび頭(がしら)  [4-7 敵]p241 新p253

おさめ金(ヽヽヽ)  [5-1 深川・千鳥橋]p13 新p13
支度金(したくがね)[5-2 乞食坊主]p53 新p56
盗金(あがり)    [5-3 女賊]p108 新p113
押し込み       [5-4 おしゃべり源八]p145 新p152
ひとりばたらき    [5-5 兇賊]p159 新p167

狐火札        [6-4 狐火]p121 新p128
連絡(つなぎ)    [6-4 狐火]p145 新p
蝋型(ろうがた)錠前[6-4 狐火]p166 新p175

隠居金(いんきょがね)[7-2 隠居金七百両]p58 新p60
(すけ)ばたらき [7-3 はさみ撃ち]p80 新p85
女だまし(ヽヽヽ) [7-3 はさみ撃ち]p81 新p85
現役(いきばたらき)[7-3 はさみ撃ち]p84 新p89
流れ盗(づと)め  [7-3 はさみ撃ち]p85 新p90
たらしこみ      [7-4 掻堀のおけい]p115 新p121
ききこみ       [7-4 掻堀のおけい]p116 新p122
盗み細工      [7-5 泥鰌の和助始末]p155 新p165

(ひと)りばたらき[10-1犬神の権三]p16 新p17
(つと)めばたらき[10-1犬神の権三]p27 新p29
密偵(てのもの)  [10-1犬神の権三]p28 新p30
こそこそ盗(つと)  [10-5むかしなじみ]p181 新p191

嘗役(なめやく)  [12-7二人女房]p308 新p322

ながれづとめ    [14-2尻毛の長右衛門]p46 新p47
つなぎ(ヽヽ)    [14-2尻毛の長右衛門]p46 新p47
固めの盃(さかずき)[14-2尻毛の長右衛門]p48 新p49
口合人(くちあい) [14-2尻毛の長右衛門]p50 新p52
かため(ヽヽ)の盃 [14-6さむらい松五郎]p264 新p272

鍵師(かぎし)    [15-1赤い空]p50 新p51
畜生ばたらき    [15-1赤い空]p50 新p52
蝋型(ろうがた)金蔵[15-1赤い空]p50 新p52

急ぎばたらき    [16-1影法師]p12 新p12
流れづとめ(ヽヽヽ) [16-1影法師]p12 新p12
盗みばたらき    [16-1影法師]p12 新p12
盗金(ぬすみがね) [16-1影法師]p12 新p13
嘗帳(なめちょう)  [16-3白根の万左衛門]p114 新p119

一人ばたらき    [18-2馴馬の三蔵]p46 新p50
ひとり盗(づと)  [18-2馴馬の三蔵]p67 新p70

引き込み(ヽヽヽヽ)[19-6引き込み女]p269 新p277

引退金(ひきがね) [21-5春の淡雪]p176 新p181
(つと)め人(にん)[21-2瓶割り小僧]p52 新装p54

つぶやき:
池波さん には『鬼平犯科帳』シリーズを連載する以前から、白浪もの幾篇かがあり、 『鬼平犯科帳』の習作になっているとともに、盗賊用語の試作にもなっている。
熊五郎の顔  「推理ストーリー」1962年02月号 目明し
盗賊の宿   「小説倶楽部」  1962年05月号  盗人宿
白浪看板   「別冊小説新潮」 1965年07夏号  戒律

また、上記の用語を、盗人の流儀、職種、技術用語などにも分類すれば、 『盗賊マニュアル』ともなろう。

明日は、50音順に並べ替えよう。

問い:
以上の中で、あなたが感心しているのは?
3つほど指定して、書きこんでほしい。

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160小説まわり・池波造語」カテゴリの記事

コメント

勘ばたらき

引退金

急ぎ盗

投稿: おっぺ | 2006.07.20 07:01

急ぎ盗

にかえて、お盗(おつとめ)

投稿: おっぺ | 2006.07.20 07:03

真の盗賊のモラル
同じ盗賊でありながら急ぎ盗との差をつけるのがおもしろい。

嘗役(嘗帖)
情報を提供するしくみがあったのに感心する。

口合人
現代と同じく仲介人が大事な位置づけをしている。

投稿: 豊麻呂 | 2006.07.20 08:26

引き込み
確かにこの手順があってまちがいのない仕事が出来るのだと感心した役目。

嘗役
好奇心とネットワーク、体力に優れた情報家、話芸にも富んでいた人。

口合人
現在の人材派遣会社の役員かな。嘗役よりも一つせじに長けた人格者か。

投稿: 永代橋際蕎麦やのおつゆ | 2006.07.20 08:37

助けばたらき
嘗帖(嘗役)
勘ばたらき
----どれも今も使えそうだから。

投稿: 豊島のお幾 | 2006.07.20 08:40

急ぎばたらき
盗人宿
ひきこみ

---読んですぐ意味がわかる。

投稿: おまさ | 2006.07.20 08:43

池波正太郎先生の発案とされる、盗人の仕事や仕組
手口などについて、それ以前の時代劇では使われて
いなかった新語が数多く見られ、改めて驚きを感じ
ます。
「鬼平犯科帳」以後の時代劇でも同じような表現が
あったかどうか知りませんが、生活費を稼ぐ行為が
盗人にとっては「おつとめ」であることは当然であ
り、さわやかな感じがします。

投稿: edoaruki | 2006.07.21 06:20

>edarukiさん


>盗人の仕事や仕組、手口などについて、それ以前の時代劇では使われていなかった新語が数多く見られ、改めて驚きを感じ
ます。

おっしゃるとおりですね。
その前に、忍者もので独特な用語を考案された経験が生きているのでしょう。
山田風太郎さんの忍者ものと比較すると、池波さんの忍者は生身の人間であることがわかります。
盗人もそなうなんですね。

投稿: ちゅうすけ | 2006.07.21 12:31

嘗役(なめやく)、盗人宿、鼠盗(ねずみばたらき)

いすれも、いかにも、それらしく、もつともらしいネーミング。

投稿: 森下の友之助 | 2006.07.23 11:08

嘗役

引きこみ

密偵

投稿: 大川端こなみ | 2006.07.24 04:06

首領(しゅりょう)→長官(おかしら)

連絡(つなぎ)

やはり狗=密偵(いぬ)ですか---ね。

投稿: mohala | 2006.07.24 04:09

お目あて細見 
 細見はいいえて妙。

鼠盗(ねずみばたらき)
 鼠は汚い、小さく可愛い---

口合人
 口(裏)合の一字省略形?

投稿: 西坂 | 2006.07.24 04:15

どれもこれもよく考えたものだとおもいます。

真の盗賊のモラル

口合人

嘗役
 音(おん)が気に入りました。

投稿: 所沢のおつる | 2006.07.24 04:18

[盗人のタイプについて]
急ぎ盗(ばたらき)
急ぎばたらき
 準備に手間をかけず、問答無用の血なまくざい仕様にぴったりと感心。
(こそこそ盗め、畜生ばたらき、遠国盗、助(す)けばたらき、流れづとめ、一人ばたらき---)

嘗役・嘗帖
 なんとなく、一読して読者にわからしめる。
 そして何か照れて。隠れて、密かに、の感じ。

[金にまつわる用語]
隠居金、引退金(ひきがね)、支度金(したくがね)
 盗賊の世界にも退職金があるかと、あらためて感心する。


 

投稿: 聡庵 | 2006.07.24 04:28

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