〔通り名(呼び名)〕の原型
『鬼平犯科帳』に登場している盗賊たちの〔通り名(呼び名)〕の拠ってきたる所については、400人以上について、すでにリサーチをつくして、左欄(以前は右欄)には50音順に検索できるようにしている。
その中で、地名を冠したものは、池波さんが忍者ものを書いたときにすでに使っている---としたが、じつは、その前から心がけていたことを、きょう、長谷川伸師の[関の弥太っぺ]を再読して気がついた。
[関の弥太っぺ]は、[瞼の母][沓掛の時次郎][一本刀土俵入り]などとともに長谷川伸師の渡世人戯曲の代表作である。
その中でも、〔関(せき)〕の弥太郎は、いってよければ、日本版ハードボイルド的なヒーロー。
少女を母親の実家へ名前も告げずに連れて行くが、10年後、義兄弟の誓いをした〔箱田(はこだ)〕の森介が弥太郎になりすまし、美しく育った娘の婿になろうとしている場面に現れ、娘の危急を救う。
{関〕の〔通り名〕が、弥太郎の生まれが常陸国結城在の関本村であることによるのは、かつて調べてしっていた。
〔箱田〕の森介の「はこだ」は、現在は熊谷市に入っている箱田と、今回、地図で確かめた。JR高崎線の熊谷駅から1kmもない、市役所に隣接した町だった。
長谷川伸師の作品を、なめるように読んだ池波さんのこと、「もしかしたら、箱田へも実地調査に訪れたかもしれないな」と思った。
池波さんの、そうしたリサーチと思い込みが、『鬼平犯科帳』の盗賊たちの〔通り名(呼び名)〕に反映しているとおもうと、[関の弥太っぺ]のおもしろさが倍加した。
写真の文庫は、上記4戯曲のほかに、[雪の渡り鳥][暗闇の丑松]も収録している((ちくま文庫 1994.10.24)。
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