藍染川、神田紺屋町
藍染川、神田紺屋町
雪旦の『江戸名所図会』に刺激をうけた広重は、版元とともに江戸土産としての『江戸百景』を企画、119景を描いた。
うち、雪旦に対応したのは95景あまり。
もっとも、当代売れっ子の広重が、雪旦のように現場をいちいち踏んだか、内弟子にスケッチをさせたものを下絵にしたかは、わからない。
ただ、この[神田紺屋町]は、中心部のことではあるし、広重の心象風景とおもって相違あるまい。
近景で翻っている反物を、作家・佐藤雅美さんは、直木賞受賞作『恵比寿屋喜兵衛手控え』(講談社文庫)で、
---裁って手拭にするのだろう、目にそれとはっきり柄がわかるのは、吉原つなぎや芝翫縞など藍そめの木綿の反物だ---
と見ている。
遠景に富士を配す。売り絵の目玉は霊峰と桜花だ。
ただ、広重は、富士を置きすぎる。119景中14景。
雪旦は、約670景中わずかに10景。
同じ町内を、雪旦は[藍染川]に象徴させている。
染物を干す前に流れでさらすからだろうか、水が藍色に染まっているので、川名も藍染川。
(塗り絵師・常盤町の昌枝 朝日カルチャーセンター新宿 元[鬼平]クラス)
流れをのぞいている男のつぶやき。
「藍染川っていうから、鯉も藍色にそまっているかとおもったら、緋鯉は緋色、黒鯉は黒いままだぜ」
平岩弓枝さん『御宿かわせみ』のヒロイン・るいは、いう。
「紺屋が藍染をこの川で洗うからだっていいますよ。でも、逢い初めと書いて、逢初川だという人もあるんです」[9-4 藍染川]
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0023藍染川
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コメント
図中の振り売りは、豆腐売りです。
豆腐売りは盤台の上に白い箱を必ずおいて売っていたそうです。声ばかりでなく、見ただけでなにを売っているのかわかる仕掛けですね。
「蘇鉄らしき鉢植え」に、江戸後期に「草花」「植木」に人々が関心を持って楽しんでいたのがわかりますね。
投稿: 秋山太兵衛 | 2006.11.13 22:47