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2006.11.10

湯島天神

湯島天満宮

「別れろ切れろは、芸者の時に言われること」---悲痛なセリフと白梅の香り。
いまではお蔦の心意気よりも、受験に受かるかどうかの悲願のほうが有名だが、湯島天神というと、風景の色気について考えてしまう。

もっとも池波さんは、雪旦も広重も描き、戦前の境内からは望見できた不忍池の風情を懐かしんでいる。
夜鴉の鳴き声に不吉な予感をおぼえた密偵おまさが、〔峰山(みねやま)〕の初蔵お頭に声をかけられたのも、湯島天神の境内だった([21 炎の色])。
それがきっかけになって、おまさはレスビアンの女賊〔荒神(こうじん)〕のお夏に惚れられ、未完の[24 誘拐]へと連鎖していく。

雪旦は、樹木や通り人の姿態で風景に色気を添える。遠景の女性の場合、定型化されているようで、仔細にみるとそうではない。歩き方にも表情をのぞかせている。
(塗り絵師・永代橋際蕎麦屋のおつゆ)
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広重には、多色という武器がある。ただ、この絵では雪でその武器を覆い、赤色をきわだたせ、さらに、満面の湖水。恋うる女と待つ男。
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拡大画像↓クリック
0452湯島天満宮

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169雪旦の江戸・広重の江戸」カテゴリの記事

コメント

広重の女坂から上野方向を望んだ雪景色。
会図と比較しても高台の湯島天神からの眺望のすばらしさが想像できます。

雪の朝、坂を上がってくる参詣前の二人連れ、頭巾を被った女人ひとりは参詣前かあとか、気がかりなうしろ姿が目をひく。


落語の富籤ばなしにも登場する舞台。
富籤がまきおこす悲喜こもごもの人情噺がなんど聞いてもおおいに笑わせてくれます。

投稿: 永代橋際おつゆ | 2006.11.10 09:45

>おつゆさん

落語で湯島天神の富をあつかった噺、一つ二つ、サワリざけご披露くださいませんか。

投稿: ちゅうすけ | 2006.11.10 11:35

「湯島天満宮」のタイトルながら描かれているのは不忍池と弁天堂。
これも広重にしてはおとなしい構図ですね。

投稿: 靖酔 | 2006.11.10 12:02

富籤をあつかった噺は御慶・富久・富の札・宿屋の富などがあります。
湯島天神が舞台になっている「宿屋の富」が面白く、滑稽で大好きな話しです。

お金持ちだと言って泊まり込んでいる男に、宿の主が売れ残りの富くじを売った。当たったら半分の五百両をあげると約束。当日千両当たったことがわかる。
慌てたのは泊り客と宿の主人,二階で寝ている客を起こしに、

「約束?覚えてますよだから落ち着いて下駄ぐらいぬいでからあがってらっしゃい」

「お客様はお金持ちだから落ち着いていられるんですよ。とにかく、おきてください」と。
ふとんをめくると客も下駄を履いたまま寝ていたと言うオチ!

この噺、志ん朝さんが実に面白おかしく、うまい!んです。
戸原さんをさしおいて落語を語るなど大それたことで何ともお恥ずかしい限りです。

投稿: 永代橋際おつゆ | 2006.11.10 14:48

>永代橋際おつゆさん

お教え、ありがとうございました。
わが書庫に、講談社文庫『古典落語』上、下、続、続々、続々々と、5冊あり、[宿屋の富]は下にありました。さっそく、読んでみます。

投稿: ちゅうすけ | 2006.11.11 08:16

間違えました。[宿屋の富]は、講談社文庫『古典落語』上(1967.4.15)でした。
手元のは、1957.11.30で、第36刷。10年半でこれですから、落語ファンは、靖酔さん、おつゆさん、お豊さん、お幾さんをはじめとして、ずいぶん多いということです。

解説によると、[宿屋の富]は大阪落語の[高津の富]を明治期に東京に置き換えたものだそうです。

高津の宮が、最初は杉の森神社、そして湯島天神へ置きかえられたのですね。

投稿: ちゅうすけ | 2006.11.11 11:08

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