葵小僧の展開(3) 50人登場
むらいさんと永代橋際蕎麦屋のおつゆさんコンビの研究発表---
まず、むらいさん分。
三田村鳶魚では、怪盗葵小僧のコンセプトの内、
・仰々しい行装、
・女性をなぶりものにすること、
・取調べで犯行を得意げに自白すること、
・鬼平の迅速な処刑、
が既に出ています。
これに、[江戸怪盗記](角川文庫『にっぽん怪盗伝』に所載)では、
・付け鼻
・葵小僧が犯行に到った背景
が加えられ、
『鬼平犯科帳』[2-4 妖盗葵小僧]では、
・声色
が更に加わって話が膨らんでいます。
また、『鬼平犯科帳』では、粂八が登場して、話の輪は大きくなっています。
ちなみに、ざっとですが、[江戸怪盗記]での登場人物は16人、
[妖盗葵小僧]では50人登場しています。
クラスでは言い忘れ、先生が指摘なさった、
[江戸怪盗記]では佐島同心が殉職、
[妖盗葵小僧]では佐島同心の代わりに今井助次郎という同心が亡くなっているのは、犯科帳の登場人物を考える上では大事なことだと思います。
おつゆさん言葉。
最初に発表なさった、森下の友の助さん・亀戸のおKさんコンビの発表で殆どいい尽されているので、
村井さんの発表を聞いて、発表の意図とからちょっと離れてみた。
鬼平犯科帳の中でこの小説が私にはとても嫌悪感をもつ内容なので
まともに読みきることがなかったが、宿題できっちり読む事になる。
・・・がどうしても女の立場で読んでしまう。
葵小僧の過去の女性への屈辱、憎悪が転落、世間を騒がす稀有な泥棒に突き進んでいく。
主人公に池波さんが「江戸の大店の美しい女性」の存在する店を次々に登場させ、
襲わせ、30件以上にも及ぶ事件として江戸中を歩かせる。
『鬼平犯科帳』には女性の読者も多いのに、何故この内容を取り上げたのか?
当初、池波さんは『鬼平犯科帳』を2年くらいで辞めようと思っていたそうなので、
そのぎりぎりのところで
不本意ながら読者サービスで書いたのではと思った。
・・が男性読者はどう感じて読まれたのか?
年末から年始にかけてこの宿題に振り回されて、あれこれメモをとっているうち
(皆さんが取り上げた事が殆ど同じ)
自分のなかにたっぷりしみこんで発表の際には全て過去形なりながら、
最初にわたしが感じた
「何故、女性をそこまで異常に弄ぶのか」
に戻ってしまうので皆さんに逆に聞きたくての発表になりました。
先生の総評や葵小僧の歩いた経路を辿るお話しから、
ア~「面白さがここにあること」を知らされ
先生の導き方、男女の読み解く視点の違いをくっきり見る事が出来ました。
「こうゆう研究発表、面白いね~」と先生が感想を述べられましたが私もしみじみ同感してます。
深く読む事、他の方々の調査したことが聞けることは、想像力の広がりをいただけ有難いと思って今もその思いを引きずっています。
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