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2007.01.16

葵小僧の展開(2) つけ鼻

森下の友の助さんと亀戸のおKさんコンビの研究発表---

おKさんがどうやって見つけたのか、江戸にもあった隆鼻術の話を探し出してきた。
Photo_268[2-4 妖盗葵小僧]では、尾張の小野川一座の子役でならした桐野谷芳之助が、長ずるにしたがってその低い鼻のせいで人気がすたる。
つけ鼻をして舞台にあがると観客に嘲笑される。
想っていた女はライヴァル役のほうへ走る。
そんなこんなで、失意のはてに盗みの世界へはまった。

要するに、つけ鼻がコンプレックスを癒してくれる妙薬だった。
つけ鼻をしていると、自信が湧いてきて、押し込んだ先で女性を誑かすことができた。

42枚だった短篇[江戸怪盗記]を、ほぼ3倍の136枚の中篇[妖盗葵小僧]へふくらましえた。
押し込み先は4件から10件にふえた。その分、犯した対象も、女房から娘までにひろがった。

書きこむことでふくらませたいるわだが、友の助さんはそれを、
1.時間軸を長くとった。葵小僧の盗業期間を、[江戸怪盗記]の寛政3年(1801)の夏ごろから年末までの半年間を、[妖盗葵小僧]では3年7月15日から翌4年9月末までの1年2ヶ月とした。

2.事件数を多くした。(上記)

3.火盗改メの活躍ぶりや段取りの妙を書きこむ。事件の発端を密偵〔〔小房(こぶさ)〕の粂八がつかむ。粂八はこの篇の前にすでに登場しているところは、連載なればこそ。

4.葵小僧の生い立ちや転落の人生を描いて、レイプというおぞましい振る舞いの背景にあるものを描き出す。
---などなどの手法を組み合わせている、と分析した。

なお、おKさんが見つけてきた[高い鼻の物争い]の出典は、軽口恵方の若水『絵本仕立噺本』(安永末?)で、「入歯入鼻仕り候」の看板に引かれて注文した低鼻の主が、代金3両2分ときいて驚き、入鼻をもぎとり「鼻はそっちのもの、顔はおれかずもの」と逃げ帰る話。

三田村鳶魚『泥坊づくし』(河出文庫)

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