主役をふられた同心たち
本来は脇役のはずなのに、ある篇で主役をふられた同心は14人。うち、自裁・殉職したのが2人。木村忠吾は3編、それだけ物語のネタになるということ。
同心が主人公になっている篇のリスト
[1-1 唖の十蔵]……………小野十蔵
[2-2 谷中・いろは茶屋]……木村忠吾
[2-6 お雪の乳房] …………木村忠吾
[3-1 麻布ねずみ坂]………山田市太郎
[3-3 艶婦の毒]……………木村忠吾
[4-5 あばたの新助]……… 佐々木新助
[5-4 おしゃべり源八]………久保田源八
[6-3 剣客]…………………沢田小平次
[8-2 あきれた奴]………… 小柳安五郎
[10-6 消えた男]…………… 高松繁太郎
[11-4 泣き味噌屋]…………川村弥助
[12-1 いろおとこ]………… 寺田金三郎
[12-6 白蝮]…………………沢田小平次
[13-3 夜針の音松]…………松永弥四郎 お節
[18-1 俄か雨]………………細川峰太郎
[20-1 おしま金三郎]……… 松波金三郎
同心筆頭の酒井祐助が主役をはっていない理由の推測はすでに述べた。
池波さんは、『鬼平犯科帳』を書き始めるにあたり、泥棒と同心を順次、物語の中心に置いていけば篇がつながると思った。さらに、粂八、彦十、伊三次、おまさなどの密偵が加わる。
なぜ、それで書こうとおもったか---長谷川平蔵の史料があまりに少なすぎたからである。
これには、池波さんも、ほとほと、困ったろう。
ところが、『オール讀物』からは「長谷川平蔵が主役ではなかったのか」と催促される。そこで、『江戸会誌』にあった「平蔵は幹事の才あり」をヒントに、池波さんが理想とするリーダー像を平蔵に仮託したとみる。
長谷川伸師の書庫で、池波さんが手にとった『江戸会誌』(明治23年6月号 これに「平蔵は幹事の才あり」の記事が掲載されていた)
推測は、大きくは間違ってはいまい。
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