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2007.02.17

お八重という女

『鬼平犯科帳』に登場している脇役で、想像力をくすぐられ、ついつい気になる女性が何人かいる。
うちの一人が、[3-1 麻布ねずみ坂]で、指圧医師・中村宗仙(62歳)が下ってくるのを待ちこがれているお八重。

3年前、お八重は26,7歳の塾女。京の東寺の境内で〔丹後や〕という料理屋をとりしきっていた。
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東寺(『都名所図会』 塗り絵師:ちゅうすけ)

お八重の、細(ほ)っそりとした肩から胸乳(むなぢ)のあたりのなよやかさ。
にもかかわらず、「尻が背中(せな)にくっついている」。
いや、女に目の肥えている宗仙の、お八重の発達した下半身の見立てである。

『商人買物独案内』(天保5年 1834刊)には、東寺の境内に料亭がたしかに載っている。池波さんは、それを〔丹後や〕に見立てたのだろう。
Photo_287

宗仙は、お八重が急病で寝込んでいるところへおしかけ、下腹を指圧しているうちに、双方、その気になってしまった。
30歳もの年齢差にもかかわらず、宗仙の鍛えられた指先の秘技に、お八重は夢ごこち。

が、お八重が、大坂の香具師の元締〔白子(しらこ)〕の菊右衛門の妾だったからたまらない。
五百両で売ってやるといわれただけでも「よし」としなければいけない。

金策のために江戸へ下った宗仙は、必死に稼いだ金を浪人・石島精之進へ渡すが、持ち逃げされてしまう。
菊右衛門は、惜しげもなくお八重を始末。
間男した女に未練はないということか。
それとも、宗仙の指技を知ってしまったお八重は、菊右衛門では物足りない顔をしてしまったか。

事態を知った宗仙は、ねずみ坂の自宅(下の赤○)からほど近い光照寺(上の赤○)にお八重の墓をつくり、供養を欠かさない。
Photo_288
近江屋板 麻布・ねずみ坂あたり

光照寺は、東京オリンピックの道路拡張にひっかかって、都下・八王子市絹ヶ岡3丁目へ移転した。墓をまもるために、宗仙も移住したかも。

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コメント

「都名所図会」の東寺、広大な寺領だったのですね
お八重が取り仕切っていた「丹後や」は境内のどのあたりだったのでしょう。

今年も東寺には紅しだれ梅が五重塔をバックに咲き始めた頃と思います。

投稿: みやこのお豊 | 2007.02.18 00:02

紅しだれ梅かあ。
10年ほど前に本堂の仏像たちは参観させていただきましたが、しだれ梅のことは知りませんでした。
でも、尻が背中についているお八重さんに似合いそう。

投稿: ちゅすけ | 2007.02.20 14:31

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