平蔵、書状を認めた(4)
長火鉢から、燗のできたちろりをとった,寝衣の小夜(さよ)が、
「もう一杯、いけますか---?」
「いえ、もうだめです」
真っ赤になっている辰蔵(たつぞう 13歳)が、
「酒は、こんどの旅で初めて口にしたのです。もう、胸が苦しくて---」
寝衣に帯をしていないかったから、立って前身がもろにあらわれた小夜から、辰蔵の目が離れない。
外の寒気にさらしておいた土瓶から、湯呑みに真水を注いできた。
「甘露---」
「大井川の伏流水です。お代わり---?」
「はい」
湯呑みを差しだすとき、さも裾が邪魔といった風情で、ぱっと後ろへはねたから、胸はあらわ、さっきみちびかれた腰から下もまるだしになった。
凝視している辰蔵を見すえ、盃から含んで唇をよせ、ちょっぴり口うつしにする。
腰を抱いていいものかどうか、逡巡している少年に、
「おもいどおりにしていいのですよ。さっき、躰がひとつになったのです。もう、他人ではないのだから、遠慮することはありません」
「はい」
小夜の口調は微妙にぞんざいになっていた。
辰蔵が恐るおそる黒い芝生に指をふれた。
「指が入りたがっている?」
声がでないのか、うなずいた。
「入れて---でも、辰っつぁんの元気のいい、そのもののほうがもっと嬉しい」
嬉しがらせるそのものは、すでに回復していた。
床の中で、全裸の肌と肌をくつつけあいながら、
「辰っつぁん、私を嬉しがらせるようなことをいってみて---」
「どんなことを---?」
躰のどこでもいいから、感じたままを言葉にすればいいとみちびかれ、
「乳首の感じを10年以上も忘却していました。妹たちがすぐ生まれたのです。こんなにおいしく、香ばしいものだったことをおもいだし、嬉しくなりました」
舌でまさぐるようにすすめられ、かぶりつくようにふくんだ。
(北斎「ついの雛形」部分 イメージ)
「ややを産んでないから、小さいの」
「拙は初めての子だったから、母者の乳首も小さかった---」
「お父上が怠慢だったのよ」
「えっ? ああ、そうだったのかも---」
辰蔵は、好きだった12歳の丹而(にじ)の乳房のふくらみがまだ小さく、乳首も米粒ほどだったと白状した。
小夜は笑い、
「舌でなぶった?」
「指先だけです」
「小さかったなんてこと、丹而さんに告げてはだめよ。おんなの子って、自分の乳房がもりあがらないのをとても気にしているんだから---」
「告げません。もう、別の男の子と仲よくしていて、拙は相手にしてもらえないのです」
「おかわいそうに、袖にされたのね?」
「はい---」
「代わりに、小夜がこうしてあげてるでしょ」
「一生、忘れません」
「嬉しい---さ、おさらい。そう、そこ---」
その夜、父親とよく似た躰つきの辰蔵が素振りをしたときの腕や肩の筋肉の動きを見ていたとき、下腹の芯が熱くなったことをおもいだし、
「父と子、よ、ねえ」
とつぶやいた。
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コメント
辰蔵さん、ついに女体の秘密の扉をあけましたね。お父上より半才ほど早かったのは、時代の流れでだんだん早熟になっていたのでしょう。
小夜さん、上手に導いてあげました。
「私を嬉しがらせるようなこと、何か、言って---」
女なら、ベッドではみんな、こころにおもっていますよ。
それをさりげなく伝授するあたり、さすが小夜さん!
投稿: tomo | 2011.06.24 06:10
>tomo さん
閨室ごとを、生々しくならないように、しかもエロっぽく書くのって意外にむつかしいものですね。
ヒロインにより言葉づかいまで替えるのも~~~
投稿: ちゅうすけ | 2011.06.24 07:57