剣客(けんかく)医師・堀本伯道
『鬼平犯科帳』の最初の長篇である文庫巻15[雲竜剣]で、謎の人物として鬼平を悩ます。探索していくうちに、伯道に虎太郎という息子がいることが分かってきた。
年齢・容姿:74歳 p268(新装版p278)。白髪。すっきりと高い背丈、みごとな筋骨。物腰に気品。
生国:近江(おうみ)国 滋賀郡(しがごおり)本堅田村(現・滋賀県大津市堅田)。
探索の発端:本芝の法泉寺の塀の外で、同心・片山慶応次郎が斬殺されていた。つづいて深川の海福寺(明治42年に目黒区下目黒3丁目へ移転。跡地は明治小学校)の境内に、同心・金子清五郎の死体が捨てられていた。殺人者の手がかりはまったくない。
府内では、外道じみた押し込みが行われ、鬼平も闇討ちにあう。
そんなとき、西久保町の京扇店[ 平野屋]の番頭・茂兵衛が、近江・八日市村の鍵師・助治郎が訪れてきたとの密告してきた。鍵師・助治郎を尾行することで、背後に剣客医師・堀本伯道の影が見えてきた。深川の足袋問屋〔尾張屋〕が標的らしい。
(参照: 鍵師・助治郎の項)
(参照: 〔馬伏〕の茂兵衛の項)
結末:伯道がおせきに産ませた虎太郎は、浪人どもと組んで非道な盗めを繰り返していた。伯道は、盗人宿にしている根岸の寮で虎太郎を成敗しようとして、逆に斬られた。対決を、鬼平が引き継いだ。虎太郎の喉もとに血が走った。
つぶやき:盗みに手を染めざるをえなかったことを、堀本伯道が、鍵師・助治郎にしみじみと述懐する。
「わしが剣術のほかに医術をおさめていたからじゃ。金がな、金がないと、いまの世の中では医術も物をいわぬ。見す見す助けてやれる者も助けてやれぬことが多い」
鍵師・助治郎は、合鍵を盗賊たちへ売った金で各地に報謝宿を営んでいた。同郷の伯道とも、報謝宿の縁で付き合いが始まった。
悪を行いつつ善をほどこす----池波人生哲学のいい意味での具現者が堀本伯道であり、助治郎である。
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コメント
医師の堀本伯道さん、粂八さんに次いで好きなキャラのお一人。
だって、70歳をすぎても、6尺近い背筋をしゃんと伸ばしているんでしょ。ロマンスグレー(古いなあ)。
しかも、剣は一流。男らしいじゃん。
投稿: 岩井町裏店 おこん | 2005.03.28 19:15
>おこんさん
たしんに、すばらしいキャラですね。
ひきかえ、息子の虎太郎のひがみっぽい性根は、どこからきたのでしょう。
案外、伯道先生の「しまった、この女に---」といった後悔を、敏感に感じとって---。
投稿: ちゅうすけ | 2005.03.29 15:05