〔乙畑(おつはた)〕の源八
『鬼平犯科帳』文庫巻4の[血闘]と[おみね徳次郎]、巻5の[女賊]、巻6[狐火]、巻19[引きこみ女]、巻23[炎の色]に名前のみでる、密偵おまさのかつてのお頭。
(参照: 女密偵おまさ)の項)
年齢・容姿:どちらも記されていない。
生国:下野(しもつけ)国塩谷郡(しおやごおり)乙畑(おつはた)村(現・栃木県矢板市東乙畑か西乙畑のうち)。
池波さんは(おつばた)とルビをにごってつけているが、歴博のデータベース『旧高旧領取調帳』の(おつはた)によった。
探索の発端:天明8年(1788)9月28日、先手弓第1組組頭で火盗改メを加役していた堀帯刀秀隆(家禄1,500石 52歳)が持弓頭へ栄転。火盗改メの本役(定役)の後任として同年10月2日に、先手弓の第2組組頭(1,500石格)長谷川平蔵宣以(家禄400石 43歳)が発令された。
同月の初旬---とあるから、8,9日ごろであろうか、おまさが役宅をたずねてきて、密偵となることを願いでた。
おまさは、〔乙畑〕の源八一味の引きこみ役だったから、その線から〔乙畑〕一味の動静がつつ抜けになった。
結末: 〔乙畑〕の源八一味は逮捕、全員死罪。
つぶやき:おまさが密偵を志願したのが、天明8年10月初旬---とあるが、長谷川平蔵が火盗改メに任じられたという柳営内人事を、盗人世界にいたおまさは、どんなルートで知りえたか。
平蔵側は、引継ぎや挨拶廻りに忙殺されていた時期だろうに。あるいは、堀組のヴェテラン与力・佐嶋忠介を借り受けていたので、引継ぎは簡単にすんだのか。
おまさの父親〔鶴(たずがね)〕の忠助の歿後、忠助が親しくしていた、足利に本拠を置く〔法楽寺〕の直右衛門と親しく、同じ下野国を縄張りにしている〔乙畑〕の源八との話しあいによって、おまさは〔乙畑〕に入った。
その後、当サイト[女密偵おまさ]の項にリポートしておいたように、おまさは多くの首領の手助けをしている。
(参照: 〔鶴〕の忠助の項)
(参照: 〔法楽寺〕の直右衛門の項)
しかし----、
(ここがしおどき。どうせ足を洗うなら、銕さん---いえ、長谷川さまのためにはたらきたい)
と密偵を志願して出たときには、また、〔乙畑〕の源八一味へ復帰していたのであろうか。
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コメント
乙畑のお頭って、おまささんが最初に仕えたお頭だから、よほどしっかりした頭領だったんでしょうね。
その乙畑一味を売ったほどに、銕さんへの思慕が厚かった---と見たいです。
投稿: 加代子 | 2005.03.10 17:43
>加代子さん
おまさと〔乙畑〕の関係ですが、どうも、よくわからないのです。
どちらも文庫巻4[血闘]が初登場ですが、この篇には、おまさが密偵になる直前にも〔乙畑〕一味にいたとありますし、父親の歿後には〔乙畑〕の源八のところへ配されたともあります。
そして、その間の12,3年間、〔乙畑〕以外に8人のお頭のために仕事をしているのですよね。
このあたり、池波さんが混乱なさったのではないでしょうか。
投稿: ちゅうすけ | 2005.03.10 19:11
おまさだけでなく、女性の心情は解らないというか、いざとなる大胆なことを仕出かすという事ですか。
密偵になった男は平蔵にすべてを打ち明けてるかと言うとそうでもありませんが、おまさは自分が仕えた源八まで売ってしまったのですから。
平蔵に対する思慕よりも盗みの世界に嫌悪感が生まれたのか。
[おまさ]の項でおまさの母親がどんな人物であったかという謎がだされてましたが、おまさが少女のころ堅気の生活をしていたあたりに母親は堅気の人でおまさにその血が強く流れていて堅気になるなら平蔵の下でと願いでたのにちがいありません。
投稿: 靖酔 | 2005.03.11 16:21