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2005.04.19

〔牧原(まきはら)〕の富治

『鬼平犯科帳』文庫巻4に収録されている[敵(かたき)]の〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵が片腕と頼りにしている男。

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(参照: 〔大滝〕の五郎蔵の項)

年齢・容姿:どちらも記述がない。
生国:甲斐(かい)国巨摩郡(こまこおり)牧原村(現・山梨県北巨摩郡武川村牧原)。
「牧原」なんて地名はどこにでもころがっていそうなものだが、データベース「旧高旧領」を検索すると、江戸期には上記の甲斐と豊後国大野郡牧原(まきばる)村の2カ所しかなかった。豊後は遠すぎるし、読み方も異なるから甲斐を採った。

探索の発端:鬼平の剣友の岸井左馬之助が三国峠をとおりかかると、2人の男が斬り合いをしてい、若い方が殺され、残ったほう(五郎蔵)のあとをつけたことから、その盗人宿、一味の存在、そして富治の存在が知れた。

結末:〔小妻(こづま)〕の伝八にそそのかされた〔大滝〕一味の者たちは、五郎蔵の計画と資金を盗んだ上で、五郎蔵の殺害をしようとしたが、鬼平と岸井左馬之助にさまたげられ、捕縛された。死刑であろう。
(参照: 〔小妻〕の伝八の項)

つぶやき:〔大滝(おおたき)〕の五郎蔵ほどの男でも、配下の裏切りが読めない。欲がからむと、どんなことでもやってのける。金銭欲だけにかぎらない、名声欲、自己保身欲、愛欲---この世に裏切りのタネはつきない。

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コメント

五郎蔵は右腕とまで信頼していた富治に裏切られ、ならび頭の五井の亀吉殺しの濡れ衣を着せられ、盗みの世界がいやになったのでしょうね。
それにしても富治が花屋の利兵衛を訪ねたときは五郎蔵のことを案じていながら、小妻の伝八の欲がらみの話に乗せられ裏切り、五郎蔵に一瞬といえども死の覚悟をさせ、そこに平蔵登場、そして五郎蔵と宗平の密偵誕生です。
実に上手い一編です。

投稿: 靖酔 | 2005.04.19 15:13

>靖酔さん

おっしゃるとおり、たしかに、よくできた篇だとおもいます。
とりわけ、鬼平が、〔舟形(ふながた)〕の宗平と「今日からは、義理の親子になれ」なんていう場面は、舞台だと、大向うから声がかかる場面でしょうね。

それと、〔坊主の湯〕の小屋で、嘉六爺つぁんと語りあっていて、
「外に、だれか---いるのじゃあねえか」
と耳を澄ます間なんか、みごとなものです。

でも、疑問もないわけではないのですよ。
日本橋南1丁目の呉服商〔茶屋新四郎〕方が五郎蔵一味の目標であることを、鬼平はどうして知ったのか、書かれていないようにおもいます。

また、富治、千次郎などを連れて〔坊主の湯〕へ支度金を取りにきていますが、そのときには、もう、彼らは裏切りをきめていたのではないでしょうか。それをなぜ感じとらなかつたか。
それだけ信用しきっていたのでしょうか。

投稿: ちゅうすけ | 2005.04.19 16:00

コメントありがとうございます。
小生、池波ファンではありますが、未熟者であります、益々のご指導ご鞭撻宜しくお願い致します。
鬼平さんはまだ読破していないのですが、あれなんというところでしたかね、居酒屋かなんかのシーンで、『おやじ修行したな』とか鬼平に云わせるところ、なんてゆうかしびれてしまうですよね。やっぱり、国語の教科書には『男の作法』は必須でいれて欲しい気がします。

投稿: 酒飲みの自己弁護 | 2005.04.19 22:51

>酒飲みの自己弁護さん

ようこそ、いらっしゃいました。

ここには、鬼平ファン、池波フリーク(ショータリアンなんだそうです)が、いっぱいいて、新しい仲間を待ちうけています。

『男の作法』はそうですね、中学の教科書には入れて欲しい。いえ、お酒の飲み方はまだ早いとしても、ワサビの食べ方ぐらいはね。

先日も、サシミについてきたワサビを、ショウユ皿に薬味を混ぜるように箸で溶かし、それでもって、そこへサシミをドボンとばかりにつけていた、いい年配の男性を見かけました。

そうそう、『男の作法』にかぎらず、「大川の隠居」は小学校6年生あたりの教科書へ、「あきれた奴」は中1の教科書へ入れてほしい。
このサイトから、そういうムシロ旗、かかげますか。

それには、このサイトのアクセス数が、とりあえずいまの10倍になること、「ほぼ日刊イトイ新聞」あたりとリンクすること----これ、ほかにもリンク先候補をあげていただけるとありがいです。

今後とも、よろしく、お願いします。

投稿: ちゅうすけ | 2005.04.20 04:12

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