〔神戸(かんべ)〕の柿六
『鬼平犯科帳』文庫巻9に所載の[雨引の文五郎]は、タイトルにもなっている一人ばたらきの〔雨引(あまびき)〕の文五郎と、こちらも一人ばたらきの〔落針(おちはり)〕の彦蔵との、盗人同士の決闘の物語。
(参照: 〔雨引〕の文五郎の項)
(参照: 〔落針〕の彦蔵の項)
決闘の種となってのが、〔神戸(かんべ)〕の柿六である。
文五郎と彦蔵はもとは、飛騨から甲信をテリトリーとしていた〔西尾(にしお)〕の長兵衛の右腕と左腕だった。それが、彦蔵が桑名城下で藩士を殺害、長兵衛の盟友の〔初鹿野(はじかの)〕の音松に預けられているうちに、文五郎が長兵衛の信頼を一人占めしてしまった。
戻ってきたが、おもしろくない彦蔵は、一味を抜けて凶悪な一人ばたらきに。
〔西尾〕の長兵衛が没すると、文五郎も2代目への要請をふりきって、一人ばたらきに。
〔落針(おちはり)〕の彦蔵が、大坂・心斎橋筋の足袋屋〔形名屋(かたなや)〕で畜生ばたらきをしようとした寸前に、〔雨引(あまびき)〕の文五郎が店へ投げ文をし、凶行を未然に防いだ。
彦蔵が雇った助っ人の柿六が親友の文五郎へ企みを報らせたのである。
年齢・容姿:どちらも記述されていないtが、〔雨引〕の文五郎と格別親しかったというから、30代か。
生国:播磨(はりま)国宍栗郡(しそうこうり)神戸(かんべ)村(現・兵庫県宍栗郡一宮町伊和(いわ))
三重県亀山市出身の〔落針〕の彦十とのからみや伊賀忍者関連でいうと同県鈴鹿市、松阪市、上野市、津市の神戸町も考えられる。静岡県引佐(いなさ)郡、愛知県東春日井郡、奈良県宇陀郡などの神戸もある。
大きな神社があれば神戸があり、(かんべ)(こうべ)と呼ぶ。
浅野内匠頭や大石内蔵助関連の取材をすすんめていたことや、播磨国一の宮・伊和神社(祭神・大己貴神 おおなむちのかみ、少彦名神 すくにひこなのかみ)にことよせて、一宮町を採った。
探索の発端:大坂・心斎橋筋の足袋屋〔形名屋〕の事件が、未然に防がれた経緯は、上記のとうりである。
結末:処刑の記述もないし、所在も不明。したがって、文五郎の自裁も知らされない。
つぶやき:こういう脇役の探索がもっとも手こずる。リサーチ資料ばかりがいたずらに増えていく。伊和神社からも「由緒略記」を取り寄せた。
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コメント
小さい脇役ほど記述されていないので、探索の為には資料が多くなるのですね。
本当にご苦労様です。
でもこの脇役がいなければ、このストーリーは成り立ちません。
私達にはとても推理がおよびませんので、
どうかこれからも、池波さんの創作の秘密を
探って、私達に教えてください。
投稿: みやこのお豊 | 2005.06.16 21:24
>みやこのお豊さん
このシリーズを始めて、6カ月近くなります。
アクセスも100/日と増えてきました。
全国の鬼平好きの方々に認知されるのも、そう遠くはなかろうと信じて、手間暇かけてつづけています。
地方自治体の「観光資源」になればと、提案しているのですが、ここがまだ弱いようです。
自治体の活性化といっても、公務員の方々は前例尊重で、新しいことには、「予算がない」をいいわけにして、なかなか踏み出さない---
プログへの書き込みには、予算は関係ないのですが。
投稿: ちゅうすけ | 2005.06.17 07:30