〔影信(かげのぶ)〕の伝吉
『鬼平犯科帳』文庫巻13に収められている[墨つぼの孫八]の主人公は、大工上がりの首領〔墨斗(すみつぼ)〕の孫八。
(参照: 〔墨斗〕の孫八の項)
孫八は、江戸四宿の一、板橋宿の古着屋に次男として生まれたが、父親が腹痛でもだえ死んだ翌年、11歳の兄、その次の年には母親も病死して、さらに弟も9歳で死んだために、自分も死病にとりつかれているとおもいこんでいる。
18の歳に奉公していた大工の親方〔大喜〕のところを逃げだして放浪している孫八を拾って、盗人に仕立てた八王子の盗賊が、〔影信(かげのぶ)〕の伝吉である。孫八は、20歳になっていた。
年齢・容姿:どちらの記述もない。
生国:武蔵(むさし)国多摩郡(たまこうり)恩方(おんかた)村(現・東京都八王子市上恩方町)。
八王子市の西端に影信山(かげのぶやま 標高727.1m)がある。角川『日本地名大辞典』は「元亀年間小田原北条氏の臣、桜町中納言景信が、甲斐武田氏に備え遠見場を設けたことから山名となる」とする。
若いころにしばしば高尾山や小仏峠などを行脚した池波さんの記憶にある山の一つであろう。
探索の発端:〔墨斗〕の孫八が28歳のときに病没しているので、探索はない。孫八が一味を引きついだ。
結末:前述したごとく病死。
つぶやき:「影信山」からこの「通り名(呼び名)」を借用したときに、池波さんの頭をかすめた師匠は、だれだったろう。小学校の恩師でなければ、株屋の先輩か。まさか、長谷川伸師のおもかげではなかったろう、奥多摩の山々を渉猟していたときとは年代が違いすぎる。
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