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2005.10.20

〔津村(つむら)〕の喜平

『鬼平犯科帳』文庫巻8に収められている篇の中では中篇に近い[流星]で、江戸への足がかりを意図している巨盗〔生駒(いこま)〕の仙右衛門(62歳)の意を帯して3か月前に先発し、江戸の盗賊の頭領〔鹿山(かやま)〕の市之助(年齢不詳)との連絡役をつとめている〔津村(つむら)〕の喜平である。
(参照: 〔生駒〕の仙右衛門の項)
(参照: 〔鹿山〕の市之助の項)
下向してきた刺客・沖源蔵(中年)と杉浦要次郎(30を出たばかり)に、鬼平の姿をひそかに見せ、憶えさせもした。

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年齢・容姿:どちらの記述もない。
生国:摂津(摂津)国大坂・船場津村町(現・大阪市中央区通称・西横堀)。
吉田東伍博士『大日本地名辞書』(冨山房 明治33年--)の「津村」の項に、「船場の西部を津村といふ。古は円(つぶら)と呼べり、江湾の名に因る」と。
〔生駒〕の仙右衛門は、表向きは心斎橋・北詰に〔山家(やまが)屋〕という屋号をかかげているもぐさ問屋の主人である。地元・船場の出生である喜平は、なにかにつけて便利な存在。

探索の発端:刺客の沖、杉浦らが惨殺した長谷川組の同心・原田一之助の妻女・きよ、先手の山本伊予守組の木下同心などにより、探索が強められ、船宿〔加賀屋〕の船頭・友五郎が行方不明となるにおよんで、川越辺へ探索の目が向いた。

結末:船頭・友五郎に縁のある本所・松坂町の紙問屋〔越前屋〕の手代・庄太郎が幽閉されていた染井の植半で発見されるや、〔鹿山〕一味の臓物の隠し場所である新河岸川の廃寺にも捕方の手が及んだ。

つぶやき:〔津村〕の喜平の結末は書かれていないが、こんな端役の「通り名(呼び名)」にも、池波さんの配慮がおよんでいるのを知り、驚嘆した。
すなわち、喜平を〔生駒〕の仙右衛門の店---心斎橋に近い船場の西、西横堀生まれとして、地元へ綿密な配慮をしているのである。地元生まれが配下にいるだけで、怪しまれることも少なくなるというものだ。

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コメント

もう1年になるのですね。
昨年10月23日に新河岸川をウォーキングしたのは。

河岸記念館を訪ね、養老橋を渡り、土手道を歩き連光寺に行きました。

田圃の中の中学校前のバス停でなかなか来ないバスを待ったのも楽しい思い出です。

「流星」イコール新河岸川というイメージです。
化けもの寺と呼ばれている廃寺を見守る粂八の姿が目に浮かびます。

投稿: 靖酔 | 2005.10.20 10:13

そう、なりますね。
学習院、朝日と、3組とも、新河岸川ウォーキングをやっているので、間隔感はないのですが。

土曜の加賀藩中屋敷も、[流星]の舞台です。
刺客浪人2人が、三沢仙右衛門を刺殺の下見に行きます。

ウォーキングで、臨場感がましますね。

投稿: 西尾 忠久 | 2005.10.20 17:55

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