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2005.11.10

〔押切(おしきり)〕の定七

『鬼平犯科帳』文庫巻9に収まっている[浅草・鳥越橋]で、〔傘山(かさやま)〕の瀬兵衛(50がらみ)の配下で、浅草・瓦町の蝋燭問屋〔越後屋〕へ引き込みに入っている〔風穴(かざあな)〕(35歳)の仁助の耳へ、女房のおひろ(30前後)がお頭の瀬兵衛と乳繰りあっていると、悪魔の声を吹きこんだのが、連絡(つなぎ)役の〔押切(おしきり)〕の定七だった。
(参照: 〔傘山〕の瀬兵衛の項)
(参照: 女賊おひろの項)

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年齢・容姿:35歳。頬骨の張り出した浅黒い顔。
生国:下総(しもうさ)国葛飾郡(かつしかこおり)押切村(現・千葉県市川市押切)
「押切」という村名は、北は山形県の尾花沢市から静岡県藤枝市まで、10指にあまるほどある。その中で、市川市を選んだのは、定七が〔傘山〕の瀬兵衛を裏切って〔白駒(しろこま)〕の幸吉と手を組むことになったのは、分け前のこともあろうが、その前に地縁が2人を結びつけるきっかけとなったと見たからである。
〔白駒〕の幸吉は、上総(かずさ)の望陀郡(もうたごおりl)白駒郷(現・千葉県君津市)の出身。
(参照: 〔白駒〕の幸吉の項)

探索の発端:大横川ぞいの石島町、〔小房〕の粂八にまかされている船宿で、客として現れた〔白駒(しろこま)〕の幸吉と〔押切〕の定七が、〔傘山〕一味の仕掛けを横からかっさらうために〔風穴〕の仁助を裏切らせたことを話しあったために、粂八に疑われ、尾行(つ)けられ、それぞれの住いが判明し、見張られた。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)

結末:〔傘山〕の瀬兵衛は、浅草・鳥越橋上で、たまたま行きあった〔風穴〕の仁助の嫉妬の刃で刺殺。仁助はその場で同心・沢田小平次に捕縛された。
押し込み当夜、全員が集まった〔白駒〕の幸吉の盗人宿へ、火盗改メが打ち込むのは時間の問題。

つぶやき:『オセロ』の矮小版である。とりわけ、〔風穴〕の仁助は女房のおひろの躰を無上のものとおもいきわめていたから、定七の告げ口はこたえた。
嫉妬心に火をつけるのは、古今、もっとも有効で、そして、卑劣なテである。嫉妬心につけられて火は、時間とともにひとりでに燃えさかる。

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