剣客(けんかく)・高橋勇次郎
『鬼平は科帳』文庫巻17は、このシリーズ2つ目の長篇[鬼火]である。物語は、富士前町の居酒屋〔権兵衛酒屋〕が賊に襲われた謎を解きあかす形で展開する。そのエピソードの一つに、鬼平殺害に加担した剣客・高橋勇太郎と鬼平との偽りの果し合いがある。
間借りしているのは、池ノ端・茅町2丁目の一膳飯屋〔三州屋〕の2階。
茅町は池の左岸辺(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)
年齢・容姿:30がらみ。提灯店のおよねによると、目の色が涼やかで、引きしまって細身だが柔軟な肌身は伊三次に似ていると。
生国:信濃(しなの)国小県郡(おがたこおり)上田(現・長野県上田市)。
父は信州・上田藩士で剣は強かったが気ばたらきが鈍くで失職、浪人となり、勇次郎が17歳のときに江戸へ出てきた。
探索の発端:浪人・大野弁蔵とともに下谷町2丁目の〔みよしや〕へあがったとき、鬼平殺害の会話をおよねに聞かれてしまい、探索がはじまった。
結末:鬼平に斬りかかったものの、まるで手が出ないことがわかり、あっさりとあきらめた。
そのあきらめふりに愛嬌があるというので、鬼平が手の者の一人にしてしまう。
つぶやき:上下はもとより、対人関係を円滑にはこぶ貴重な潤滑油のひとつが「愛嬌」であることは、池波さんがつとに描いているところである。木村忠吾しかり、井関録之助しかり、岸井左馬之助しかり、〔五鉄〕の三次郎しかり、〔みよしや〕のおよねしかり。
そして、またひとり、剣客・高橋勇次郎が鬼平グループに加わった。
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