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2006.02.10

〔落合(おちあい)〕の儀十

『鬼平犯科帳』文庫巻6の末尾篇[のっそり医者]で、主人公の萩原宗順(60すぎ)を親の敵(かたき)と20年間も狙ってきた、下総・古河藩の浪人・土田万蔵(40がらみ)の悪事仲間として付きあってきたのが、〔落合(おちあい)〕の儀十である。
かつて鬼平に成敗された兇盗〔網切(あみきり)〕の甚五郎一味の生き残り。
(参照: 〔網切〕の甚五郎の項)

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年齢・容姿:30がらみ。死んだ魚のような目つき。
生国:武蔵(むさし)国豊島郡(としまこおり)下落合村(現・東京都新宿区下落合)。
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落合惣図 右手の地名が「下落合(現・JR目白駅あたり)
(『江戸名所図会』より 塗り絵師:西尾 忠久)

2つの河川が合流するところが「落合」と呼ばれる。したがって、日本中いたるところにあるが、池波さんは、儀十の「通り名(呼び名)」を『江戸名所図会』の上掲「落合惣図」から拾ったと推理。

探索の発端:小網町2丁目と3丁目の境の横丁を入ったところにある医者・萩原宗順のところへ下女として行ったおよしが、家に土田万蔵があがりこんでい、また儀十が家のまわりをうろついていたことから、鬼平へ相談。それから火盗改メの探索がはじまり、宗順が敵持ちであることも明らかになった。

結末:宗順の家を襲おうとした土田万蔵は鬼平に斬ってかかり、逆に殪された。儀十は短刀を沢田小平次にたたき落とされ、伊三次に縄をかけられた。死罪であろう。

つぶやき:「追分」や「天神」のような、全国どこにでもある地名を「通り名(呼び名)」にしている者の生国を特定するのはきわめてむずかしいし、安易に決めるのは危険きわまりない。
儀十の〔落合〕も上記のように岩手県東和町から愛知県瀬戸市まで、それこそ30以上の市町村にある。
が、『旧高旧領』には、相模国大住郡と下野国那須郡、羽前国置賜郡と武蔵国足立郡のほかには、豊島郡の下落合しか収録されていない。それで、『江戸名所図会』説を採った。

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