『御仕置例類集』より(1)
しばらく、幕府の評定所へ、火盗改メの長谷川平蔵名で裁許を伺った『御仕置例類集』から、いくばくかの事例を現代語訳してみたい。
叙述の形式は、森永種夫さんの『犯科帳---長崎奉行の記録』(岩波新書)に準ずる。ちなみに、同書のタイトルから、『鬼平犯科帳』のシリーズ・タイトルが生まれた。
○盗み (天明七年) 三十ニ番
三河無宿・久蔵 入墨の上、重敲き・門前払い
久蔵は、無宿・巳之助と馴れ合い、神田明神下同朋町・卯右衛門の軒下に矢来で囲って積んである真木、湯島横町河岸でも真木を、たびたび盗んで売り払い、その代金を卯之助と配分した。不届きなので、上記の処分といたしたい。
裁決---伺いのとおり。
○故買 (天明七年) 三十ニ番
下谷茅町ニ丁目 久兵衛店 半兵衛 代銭をもって損失を償う
半兵衛は、盗品と知らないで久蔵らから真木を買いとり、売り払った。「御定書(おつだめがき)」にあるとおり、被害金額分を弁償させたい。
裁決---伺いのとおり。
つぶやき:
『御定書』を収録した『徳川禁令考』
吉宗の時代に成文化された『御定書百ケ条』の、故買・売の条には、
〔享保6年 1721・元文5年 1740極〕
(一 盗品と知らないで買い取り、売り払ったときは、売り先から買い戻させて被害者へ返還してやり、その損金は、盗人から最初に買い取った者が負担すること)
参照:
http://homepage1.nifty.com/shimizumon/sanko/index.html
[御定書(おさだめがき)百箇条』を読む]の2004年08月12日(木)の第57条。
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コメント
今日は一つの注目される最高裁判決がくだされましたが、何時の時代にも裁きは難しいものですね。
小説「鬼平」の温情溢れる裁決にはこのようなお手本があったのですね。
投稿: みやこのお豊 | 2006.06.20 22:49
綱吉の時代に、それまでの、一事両様の裁決を、一事一様に改め、吉宗のときにさらに明文化---『御定書百ケ条』---したんですね。
しかし、小説の鬼平の魅力は、一事両様の、情をからませた裁決でしょうね。
投稿: ちゅうすけ | 2006.06.21 09:00