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2006.06.20

『御仕置例類集』より(1)

しばらく、幕府の評定所へ、火盗改メ長谷川平蔵名裁許を伺った『御仕置例類集』から、いくばくかの事例を現代語訳してみたい。
叙述の形式は、森永種夫さんの『犯科帳---長崎奉行の記録』(岩波新書)に準ずる。ちなみに、同書のタイトルから、『鬼平犯科帳』のシリーズ・タイトルが生まれた。

○盗み    (天明七年) 三十ニ番
 三河無宿・久蔵   入墨の上、重敲き・門前払い

久蔵は、無宿・巳之助と馴れ合い、神田明神下同朋町・卯右衛門の軒下に矢来で囲って積んである真木、湯島横町河岸でも真木を、たびたび盗んで売り払い、その代金を卯之助と配分した。不届きなので、上記の処分といたしたい。
裁決---伺いのとおり。

○故買    (天明七年) 三十ニ番
  下谷茅町ニ丁目 久兵衛店 半兵衛  代銭をもって損失を償う

半兵衛は、盗品と知らないで久蔵らから真木を買いとり、売り払った。「御定書(おつだめがき)」にあるとおり、被害金額分を弁償させたい。
裁決---伺いのとおり。

つぶやき:

Photo_23
『御定書』を収録した『徳川禁令考』


吉宗の時代に成文化された『御定書百ケ条』の、故買・売の条には、
〔享保6年 1721・元文5年 1740極〕
(一 盗品と知らないで買い取り、売り払ったときは、売り先から買い戻させて被害者へ返還してやり、その損金は、盗人から最初に買い取った者が負担すること)

参照:
http://homepage1.nifty.com/shimizumon/sanko/index.html
[御定書(おさだめがき)百箇条』を読む]の2004年08月12日(木)の第57条。

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コメント

今日は一つの注目される最高裁判決がくだされましたが、何時の時代にも裁きは難しいものですね。

小説「鬼平」の温情溢れる裁決にはこのようなお手本があったのですね。

投稿: みやこのお豊 | 2006.06.20 22:49

綱吉の時代に、それまでの、一事両様の裁決を、一事一様に改め、吉宗のときにさらに明文化---『御定書百ケ条』---したんですね。

しかし、小説の鬼平の魅力は、一事両様の、情をからませた裁決でしょうね。

投稿: ちゅうすけ | 2006.06.21 09:00

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