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2006.07.07

役宅の庭の花木

Mukuge__1
ムクゲの白い花

梅雨があけるのを待ちかねていたように、マンションの前庭のムクゲが花開く。
もう、まもなくだ。

文庫巻4[おみね徳次郎]では、役宅の庭に咲いているのを鬼平が眺めていたとき、佐嶋忠介が入ってきて、おみねの処置をうかがう。(p234 新装p245)

つぎに掲げた季節の庭木は、鬼平が起居している清水門外の役宅(千代田区九段南一丁目2)の庭に咲いていると『鬼平犯科帳』に書かれた花たちだ。
鬼平夫人・久栄さんの丹精によっている。
なかでも梅擬(もどき)は鬼平が手ずから植えこんだもの。
その姿や実、花のかたちを思い描けるのは、いくつ?

…白梅、桜。

初夏…つつじ、からたち、花ざくろ、南天、山桜桃(ゆすら)うめ。

夏から秋…女郎花(おみなえし)、むくげ。

秋から初冬…菊、梅擬(もどき)の実。

冬から春…藪椿(やぶつばき)。

12のうち6つ以上できたら、あなたの自然を愛する気持ちはかなり強い。
(ほとんどの花の写真を、ガーデニング・スペシャリスト村上孝子さんが、下記サイト[『鬼平犯科帳』の彩色『江戸名所図会(ずえ)][有朋(UFO)]コーナーへあげてくださっている。

火盗改メの長官に就任してからこっち、鬼平は盗賊団の追跡・逮捕、尋問・裁決に寧日なく、庭の花木を賞(め)でることで観花(はなみ)にかえている。

  長谷川平蔵が、亡父遺愛の銀煙管を把って煙草をつめなが
 ら、
 「桜花(はな)は、まだ、残っているかえ?」
 「いいえ、もう……」
 と、おまさの声が落ちつきを取りもどし、
 「もう、散ってしまいました」
 「そうか……今年もまた、ゆっくりと桜花を見なんだわ」
       ( [14―2 尻毛の長右衛門]p88 新装p90)

いまの中間管理職に似たワーカホリック(働きすぎ症候群)の鬼平だが、おいしいものや珍しいものと美酒を口にするほかに、どんな楽しみごとをもっていたろう。

そこで、あのころの江戸人の遊びの情景を『江戸名所図会』から抽出したら観花(はなみ)、紅葉狩り、雪見、潮干狩り、蛍狩り、聴虫、滝見、水車見、観劇、祭礼、行楽、買い物、外食、乗馬、旅行などなんと百景近くもあった。

各文化センターの[鬼平]クラスのメンバーを塗り絵師に仕立て、モノクロのそれらの絵を絵彩色(塗り絵)してもらった。色をつけられた江戸風景は生命を得たかのように現代へよみがえった。

鬼平研究から派生した塗り絵だが、『犯科帳』のそれぞれの話を創作するにあたって池波さんは、就寝前に『名所図会』の長谷川雪旦の絵と江戸切絵図を熟視、物語の舞台をきめていたようなのだ。

翌日、散歩しながらその舞台に鬼平などの人物を配し、あとは彼らが自由に動きまわるのを記録した、とエッセイにある。『犯科帳』を深読みするのに『名所図会』は主要な一手がかり。

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