『盗賊の日本史』
阿部 猛(たけし)さん(東京学芸大学名誉教授)『盗賊の日本史』(同成社 2006.5.10)の刊行は、近くの図書館で月刊誌『日本歴史』のバックナンバーの目次と出版広告をチェックしていて気づいた。
行きつけの図書館は購入していなかったが、区内の別の館にあったので、予約しておいた。
昨日、届く。
古代、中世は、いろんな物語から抽出(タイトルに『---日本史』とあるように、盗みという犯罪からみた社会史的な著述なのである)。
長谷川平蔵に関連するのは「近世社会」。
ざっと目を通したが、史料は『御仕置例類聚』、 『刑例抜粋』、『御触書』、『世事見聞録』、三田村鳶魚『泥棒の話 お医者様の話』、妻鹿淳子『犯科帳のなかの女たち』など。
長谷川平蔵とかかわった盗賊は、真刀(まと)徳次郎ただひとり。ただし、この盗賊は『鬼平犯科帳』には登場していない。
真刀徳次郎の記述を引き写す。
渡世人真刀(まと)徳次郎は、奥州や常陸・上総・上野・下野・武蔵などの関東筋、その他近国在々村々数百か所忍び込み、または強盗を働いた。
道中筋では、帯刀し、野袴を着て、従者または渡り盗賊を若党に仕立てて召しつれ、荷物には「御用」と書いた札をたて、また御用提灯を持たせ、寺・修験宅・百章家・質蔵・町屋の戸をこじあけ、押し開け、あるいは火縄で錠前を焼き切り、脇差を抜いて押し込み、家人をしばりあげ、声を立てる者は斬り殺し、金銭・衣類・反物・帯・脇差その他の品物を奪う。
これを、手下に命じて市場や古着屋で売らせ、または質入れし、金をみなに配分し、遊興に費やしたという。
寛政2年(1789)捕らえられた徳次郎は町中引廻しのうえ、武州大宮宿で獄門にかけられた(『刑例抜粋』)。
ほかに池波小説関連までひろげると、『男の秘図』の徳山五兵衛がかかわった〔日本左衛門〕こと浜島庄兵衛の顛末、短篇[鬼坊主の女]ヒーロー---鬼坊主清吉などに言及。
長谷川平蔵をまったく無視した観のある「近世は弱かった」と著者もあとがきで告白しているから、次作をまちたい。
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