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2005.04.06

〔西浜にしはま)〕の甚右衛門

『鬼平犯科帳』文庫巻18に入っている[草雲雀(くさひばり)]に、〔須川(すがわ)〕の友次郎に手助けをたのんだ首領として、名前だけチラッと登場。

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年齢・容姿:どちらも記述がない。
生国:近江(おうみ)国高島郡(たかしまこうり)西浜村(現・滋賀県高島郡マキノ町西浜)。
別の線---『おれの足音 上、下』(文春文庫)の取材に訪れたとの推測から、播磨(はりま)国印南郡(いんなみごおり)の西浜村(現・兵庫県高砂市北浜)も考慮にいれたが、未刊エッセイ集5冊目『わたくしの旅』(講談社 2003.03.15)に収録されている[道楽の旅]で、室津へわたるのに赤穂で小舟を雇ったとあったので、外した。

探索の発端:同心・細川峯太郎の家の菩提寺は、木村忠吾の家と同じく、目黒の感得寺である。寺は行人坂を下りきって太鼓橋をわたり、その先を左折したところにあった。

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目黒の太鼓橋(『江戸名所図会』より 塗り絵師:ちゅうすけ)

行人坂と平行ぎみに西行しているのが権之助坂で、その中腹にある茶店〔越後屋〕の寡婦お長と、細川はかつてねんごろになったことがある。
茶店〔越後屋〕の隣が、〔須川)〕の友次郎の女房おきぬがやっている煙草・小間物店〔かぎや〕で、おきぬは亭主が旅行商にでているとき、〔鳥羽(とば)〕の彦蔵という盗人と浮気をしていた。
権助坂上で友次郎と話している男が、きのう確かめた人相書の〔鳥羽〕の彦蔵と見た細川は、男が〔かぎや」へ入るところまで確かめ、役宅の筆頭与力・佐嶋忠介へ連絡したのち、見張った。

結末:〔蓑火〕の喜之助の下で修行、3カ条を守ってきた須川(すがわ)〕の友次郎だったが、〔西浜(にしはま)〕の甚右衛門一味が、大坂西横堀5丁目の砂糖問屋〔和泉屋〕への押し込みを助(す)けたとき、組みついてきた手代を突き飛ばすと、倒れた手代は運悪く頭を石に打ちつけて死亡。
〔蓑火〕の言いつけをやぶったと悩みに悩み、〔蓑火〕一味だった時代の先輩、いまは芝の三田3丁目で眼鏡師をやっている市兵衛へ悩みを訴えた。市兵衛に慰められて帰宅したところを、待ち構えていた〔鳥羽〕の彦蔵に一撃をくらって即死。
彦蔵は見張っていた火盗改メにそのまま捕縛された。

つぶやき:首領でありながら、物語中では端役も端役のこんな盗人まで拾うと、『鬼平犯科帳』だけみても、生国が特定できる盗人は300人を超える。つまり、1日11盗人のペースでアップしていっても、1年はたっぷり保ちそう。

木村忠吾や細川峯太郎の家の菩提寺が「威徳寺」から「感得寺」へ変わった経緯は、[〔朝熊(あさくま)〕の伊三次の項に記述していた。
(参照: 〔朝熊〕の伊三次の項)

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コメント

「草雲雀」 優しく美しい音色が聞こえてくるようなタイトルです。
でも内容はドロドロして清清しくないですね。

タイトルは内容を表しているものが多い様に
思っていましたが、どんな意図でつけるので
しょうか?

投稿: みやこのお豊 | 2005.04.08 00:00

>みやこのお豊さん

「草雲雀」って、コオロギの一種、と辞書に出ていました。秋の感じの演出者なんですね。

池波さんは、文庫巻15[雲竜剣]のp349(新装版p361)では、役宅の庭で鳴かせ、女郎花を添えています。

巻18のこの篇では、目黒で鳴かせています。

さらに、巻20[寺尾の治兵衛]では、お熊婆さんの〔笹や〕の裏庭で鳴かせます。p272(新装版p282)

さて、このシリーズの各篇のタイトルのつけ方ですが、生原稿でみると、書き出す前にタイトルをつけているみたいです。ですから、細かな筋書きはあとで考えるのでしょうね。

いや、原稿用紙の1枚目の冒頭をいつも7行から10行、タイトルと署名用にあけて書き出すのかな。それだと、最後の行を書き終えてからタイトルをつけることになります。

エッセイで、「黒白」という題名がなかなか出てこず、寿司屋で海苔巻きを見て[黒白]とつけたとありました。
すると、後者のケースが多いのかな。

投稿: ちゅうすけ | 2005.04.08 07:59

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