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2005.07.17

〔朝熊(あさくま)〕の宗次

『鬼平犯科帳』文庫巻22は、長篇[迷路]である。〔猫間(ねこま)〕の重兵衛と鬼平との壮絶な対決の本筋に、脇役が何十人もからむ。その1人が、同心・細川峯太郎に博打の元手を貸す浅草・福井町の香具師(やし)の元締めの〔鎌屋(かまや)〕富蔵がそうで、乾分の〔朝熊(あさくま)〕の宗次が口をそえた。
(参照: 〔鎌屋(かまや)〕富蔵の項)

222

年齢・容姿:どちらの記述もない。
生国:伊勢(いせ)国度会郡(わたらいごうり)朝熊(あさぐま)村(現・三重県伊勢市朝熊町)。
「朝熊」の村名は、空海が山中で修行していたとき、「朝熊獣出で、夕に虚空現ぜり」ゆえに名づけたと吉田東伍博士『大日本地名辞書』は記している。
町内の朝熊神社は、内宮摂二十四社の一とも。
『鬼平犯科帳』では、濁らないで(あさくま)とルビがふられている。

探索の発端:細川同心が博打をやめたので、探索されずにすんだ。

結末:上記に同じ。

つぶやき:この〔朝熊(あさくま)〕と濁らない「通り名(呼び名)〕は、密偵の伊三次が文庫巻9[泥亀(すっぽん)]で一度だけ使用したことがある。
(参照: 朝熊の伊三次の項)
再び登場したのは、池波さんが忘却したのか、あるいは、伊三次が使ったのは、推定どおり、〔泥亀〕の七蔵を安心させるためだったか。
朝熊神社の地図---
http://map.livedoor.com/map/?MAP=E136.45.20.0N34.29.1.2&ZM=8&SZ=850%2C600&OPT=e0000011&KN=1&COL=1&x=433&y=299

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コメント

yahoo!地図で検索するとこの三重県伊勢市しかHITしません。
これほどにわかりやすい場所ってないですね。
この朝熊ですが、鉄道の駅名は「あさま」と言うんですね。

http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=34.28.26.191&el=136.45.37.217&la=1&fi=1&prem=0&skey=%c4%ab%b7%a7&sc=3

投稿: 豊島のお幾 | 2005.07.18 00:26

「あさま」----そうなんです。

ただ、吉田東伍博士『大日本地名辞書』の「朝熊」に(あさくま)とルビがふってあるので、
池波さんもそれにしたがったとろうと推察して、(あさくま)にしました。

地元では、(あさま)でしょうね。富士浅間神社の「浅間」は(せんげん)(あさま)とも読み、「朝熊神社」は、「浅間」に等しいともありますから。

投稿: ちゅうすけ | 2005.07.18 04:08

伊勢の出身のものです。
地元では、朝熊町、朝熊山、朝熊駅など、皆「あさま」と呼んでいます。したがって「あさくま」と聞くとまったく違う場所のように思えます。まして、「あさぐま」と濁るのは奇異に思えます。
空海(弘法大師)が修行した(朝、熊に出会った)山は朝熊山と呼ばれています(ちなみに朝熊町はその麓にあります)。その山頂付近には弘法大師が作った金剛証寺があり、伊勢音頭で「お伊勢参らば、朝熊(あさま)をかけよ。朝熊かけねば、片参り」と唄われています。
朝熊山の山頂付近には、表面がつるつるの岩(古代信仰の磐座(いわくら))があります。その近くに、説明版があり、そこには、朝熊(あさま)とは、アイヌ語で「日が出てキラキラと光り輝く神を意味する」と書いてあります。
私の推測では、「あさま」という音が古くからあり、それに弘法大師の話が加わり「朝熊」の字が宛てられたのではないかと思います。

投稿: 伊勢人 | 2005.11.11 17:53

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