女賊おひろ
『鬼平犯科帳』文庫巻9に収まっている[浅草・鳥越橋]で、〔傘山(かさやま)〕の瀬兵衛(50がらみ)の配下で、いまは浅草・瓦町の蝋燭問屋〔越後屋〕へ引き込みに入っている〔風穴(かざあな)〕(35歳)の仁助の女房おひろ。
もと両国の見世物で軽業をやっていた。〔蓑火(みのひ)〕の喜之助のもとで修業し、それから、〔傘山〕一味に加わった。仁助とはいま風にいうと職場結婚。
(参照: 〔蓑火〕の喜之助の項)
そのおひろが、、〔傘山〕の瀬兵衛お頭と乳繰りあっているのをこの目で見た、と仁助に耳打ちして、仁助の嫉妬ごころに火をつけたのは、つなぎにきた〔押切(おしきり)〕の定七(35歳)である。場所は、蔵前の石清水正八幡宮の境内の絵馬堂で。
年齢・容姿:書かれてはいないが、30前後。細っそりとして見えながら、裸になったときの胸乳と腰まわりの量感はみごと。
生国:信濃国か甲斐国と推量するが、不明ということに。
探索の発端:2つ、記さざるをえない。1は、おひろ。深川の東のはずれ、矢竹に囲まれた一軒家の土間の下に埋められているのを、仁助を尾行(つ)けて見張っていた火盗改メが発見。
2は、大横川ぞいの石島町、〔小房〕の粂八にまかされている船宿へ、客として現れた〔白駒(しろこま)〕の幸吉と〔押切(おしきり)〕の定七が尾行(つ)けられて、それぞれの住いが判明、見張られた。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
(参照: 〔白駒〕の幸吉の項)
結末:おひろは、〔押切〕の定七に謀殺されて埋められたことはすでに述べた。
〔傘山(かさやま)〕の瀬兵衛は、浅草・鳥越橋上で、たまたま行きあった〔風穴(かざあな)〕の仁助の嫉妬の刃で刺殺。仁助はその場で同心・沢田小平次に捕縛された。
押し込み当夜、全員が集まった〔白駒(しろこま)〕の幸吉の盗人宿へ、火盗改メが打ち込むのは時間の問題。
つぶやき:小説の塗れ場は、ほとんどが読者サーウ゜ィスと承知してはいるが、『鬼平犯科帳』の盗賊連の中でもとりわけ女好きの〔傘山(かさやま)〕の瀬兵衛がひろの媚態を回想するそれは、男性の読み手の想いをかなりくすぐる。おひろが「身持ちがはかたい」女と知ってはいても。
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