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2006.01.02

〔木鼠(きねずみ)〕の吉五郎

『雲霧仁左衛門』(文庫 前・後編)の主人公の巨盗・雲霧仁左衛門(43,4歳)の右腕とも左腕ともいわれたのが小頭〔木鼠(きねずみ)〕の吉五郎である。
(参照: 雲霧仁左衛門の項)
もともとは、『大岡政談』の中に[雲切仁左衛門]として記録された物語には〔木鼠〕の吉五郎はいない。
のちに歌舞伎の白浪ものの演題の中での登場人物となり、平凡社『大辞典』(1935.08.10刊 1974.06.10復刻)では、[木鼠]の項を立て「屋根裏伝いに忍びこむ盗賊」と解説している。また、[木鼠吉五郎]の項では「雲切ニ左衛門を頭目とする雲五人男の一人なる盗賊。講釈・芝居などに現はる」と。
池波さんは、歌舞伎の吉五郎を鮮やかに肉づけしている。

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年齢・容姿:40男。小柄だが、きりりっとしまっている。すっきりと灰汁(あく)ぬけてい、物腰がおちついていて、もの静か。
生国:近江(おうみ)国)(現・滋賀県)のどこか。
もっとも、地名に「鼠」のつくところでは、信濃国安曇郡鼠穴村(現・未詳)と同埴科郡鼠宿(ねずみしゅく)村(現・未詳)、遠江国長上郡鼠野村(現・静岡県浜松市鼠野)があり、捨てがたいが、池波さんが江州と名記しているので、滋賀県のどこか---池波さんの足跡がいたるところにおよんでいる甲賀あたりかと推理。

探索の発端:雲霧一味が狙いをつけていた下谷・菊屋橋西詰の行安寺(現在はない。行く先未詳)横の呉服商〔越後屋〕を見張っていた火盗改メの同心・高瀬俵太郎らが、座頭・富の市からたぐって〔木鼠〕の吉五郎までたどりつく。

結末:一味が〔越後屋〕へ押し入ろうとしたとき、待ち構えていた火盗改メが一斉に捕縛にかかり、観念した吉五郎は無抵抗で捕まった。雲霧仁左衛門を自称して裁きを受けたのは、得体不詳の老人であった。

つぶやき:池波さんは、雲霧仁左衛門に熟慮細心で果断の小頭〔木鼠〕の吉五郎を配したとおなじく、ときの火盗改メ長官・安部式部信旨(1000石)には、心きいた与力・山田藤兵衛(40歳)をあてている。
この物語は、両参謀役の差す手引く手の力量比べとみて話むと、中間管理職の心得にもなろう。

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コメント

ニホンリス
「栗鼠」リスを漢字で当てるとこのような字になりますが、リスのことをキネズミとも呼び「木鼠」の字を当てることもあるそうです。

検索するとこんなものも
木曽の銘木
木曽の山には桧に似た椹(サワラ)、槇(マキ=コウヤマキ)、木鼠(ネズコ)、翌檜(あすなろ)が育ち、これらは「木曽の五木」と呼ばれているそうです。桧と椹と木鼠の三木で「木曽の三木」ともいうそうです。

投稿: 豊島のお幾 | 2006.01.03 11:25

>豊島のお幾さん

そうか、リスの当て字でしたか。それは知りませんでした。ご教示、大感謝。
小学館『古語大事典』にも載ってませんでした。

リスなら、小柄で、すばっしこい。天井だって伏ってゆけるかもね。

木曽の5銘木の一つにもありますか。
ただ、江州の生まれと指定されていますから、ね。
どのページかは、いまは、取り出せませんが。

投稿: ちゅうすけ | 2006.01.03 11:49

下谷・菊屋橋西詰の行安寺は今でもあると思うのですが。

投稿: 台東区 | 2007.12.02 16:16

>台東区さん
ご指摘、ありがとうございます。
電話帳に載ってなかったので、「現在はない」としてしまいました。
『台東区史』で確認しました。ご指摘のとおり、松ヶ枝1丁目に現存していました。
ご指摘のコメントを残すため、本テキストのほうは、そのままにしておきます。
このブログを、本とかDVDにする時には、台東区さんからご指摘をいただいたことを記して、訂正したほうをとるようにいたします。

投稿: ちゅうすけ | 2007.12.04 17:27

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