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2006.02.27

〔風穴(かざあな)〕の仁助

『鬼平犯科帳』文庫巻9に所載の[浅草・鳥越橋]は、シェイクスピア[マクベス]以来、「悪魔のささやき」ともいわれる妻の不逞の讒言が引きおこす悲劇である。
もっとも、>〔風穴(かざあな)〕の仁助はマクベスに比すぺくもない小者ではあっても、嫉妬の炎に強弱はない。
、お頭〔傘山(かさやま)〕の瀬兵衛(50がらみ)が、仁助の女房おひろと情事をつづけていると吹きこんだのは〔押切(おしきり)〕の定七(35歳)で、ある魂胆があったのこと。
(参照: 〔傘山〕の瀬兵衛の項)
(参照: 女賊おひろの項)
(参照: 〔押切〕の定八の項)

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年齢・容姿:35歳。色白で小柄。ふっくらとしてやさしげ。
生国:「通り名(呼び名)」の〔風穴〕が日光火山群のそれからきているとして、下野(しもつけ)国都賀群(つがこおり)日光村(栃木県日光市)。

探索の発端:〔小房〕の粂八がまかされている船宿〔鶴や〕へ、客として現れた〔白駒(しろこま)〕の幸吉と〔押切〕の定七が、〔傘山〕一味の仕掛けを横からかっさらうために〔風穴〕の仁助を裏切らせたことを話しあったために、粂八に疑われ、尾行(つ)けられ、それぞれの住いが判明し、見張られた。
(参照: 〔小房〕の粂八の項)
(参照: 〔白駒〕の幸吉の項)

結末:おひろは、定七に殺されていた。それしとは知らない仁助は、鳥越橋で見かけた瀬兵衛を刺殺し、捕らえられた。獄門であろう。
〔白駒〕と〔押切〕の逮捕の時は刻々と迫っている。

つぶやき:目に見えている〔白駒〕と〔押切〕の逮捕のことを書かないで、熱い蕎麦と酒で物語を終わらせるのは、芝居の作法であろうか。余韻が大きい。

それはそれとして、おひろという女賊。細っそりとして見えながら、裸になったときの胸乳と腰まわりの量感はみごとで、あの時の狂態がすざましい---池波さん、お得意のヒロインである。

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