〔貸本や〕の亀吉
『鬼平犯科帳』文庫巻2におさめられている[妖盗葵小僧]の主人公は、池ノ端仲町の骨董店〔鶴屋〕佐兵衛に化けている尾張の役者あがりで、桐野谷(きりのや)芳之助こと、葵小僧である。
そのお盗めぶりは、商店の上得意の人間の声色に巧みな、これも名古屋の役者くずれの〔貸本や〕の亀吉が、くぐり戸を開けさせるというもの。
年齢・容姿:40そこそこ。小男。細面の女のようにやさしい顔立ち。頭はつるつるに剃りあげている。
生国:鬼平は、名古屋か上方の役者あがりと推理したが、葵小僧との地縁をかんがえて、名古屋とみる。その近辺の生まれであろう。
探索の発端:被害者のにあった筋違御門外の料亭〔高砂屋〕の若女将おきさの実家は、亀戸の料理屋〔玉屋〕である。賊が〔高砂屋〕へ押しこむとき、〔玉屋〕の料理人の吉太郎の声色がつかわれた。
吉太郎の父親の畳職・市兵衛は、たまたま〔玉屋〕の畳替えにきていて、役者の声色をあれこれと披露した亀吉に疑いをもち、火盗改メに訴えた。
亀吉の人相書がつくられ、騙られた家々との関係が調べられ、池ノ端仲町の骨店〔鶴屋〕が
結末:神田・佐久間町3丁目の傘問屋〔花沢屋〕を襲うときに、葵小僧とともに逮捕。死罪であろう。
つぶやき:推理の端緒に役者の声色をつかうとは、いかにも演劇畑出身の池波さんらしい。
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