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2006.10.31

大根河岸の兎汁〔万七〕

Photo_232
京橋「大根河岸・青物市場」跡の碑

『鬼平犯科帳』の読み手なら、京橋「大根河岸」を見ただけで、兎の吸い物の〔万七〕というだろう。

〔万七〕は、夏場は店を閉めている、10月にならないと客を上げない。そういう凝った店だから、鬼平もひいきにしている---といったら、読み手の中の読み手から、「それは違う」と指摘される。

鬼平が最初に〔万七〕へ上ったのは、[8-1 用心棒]p30 新装p31 で、高木軍兵衛につれられてだったからである。

それからは、まるで亡父のときからのひいきみたいな感じで利用している。
といっても、[16-6 霜夜]p255 新装p264 と[19-3 おかね新五郎]p104 新装p108 の2回きりだが。

兎は、江戸人も食べていた。四ッ足だが、1羽2羽と数えるように、鳥あつかいなのだ。笑い話に、「うさぎ」を二つにきると、黒い鳥と白い鳥になって飛んでいくと。「う 鵜」と「さぎ 鷺」だ。
味が鶏に近いから出た笑い話らしい。

将軍も、元旦には兎の吸い物を召したと記録にある。

〔万七〕のそれのように、やはり、生姜とねぎをあしらって調理されているのだろうか。

Photo_233
切絵図の京橋の川上の赤○が大根河岸。 その上手は薪河岸(緑○)。
京橋の下手が竹河岸(青○)。


広重の『名所江戸百景』に[京橋竹河岸]がある。
夕暮れ後の雰囲気のある絵だ。
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[霜夜]で、〔万七〕を出た池田又四郎は、河岸道を東へ向かう。
それだと、広重の絵はあわない。明治30年代の「竹河岸」の北側の道を描いた『風俗画報』の絵のほうがふさわしい。
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コメント

どんなに探しても兎肉をこの小説のように食べさせてくれる店は見つかりませんでした。
色々な人がジビエの店は紹介してくれたんですけれど、思い描くのとは相当違うんですよね。
かといって、インターネットで簡単に手に入る兎肉を買って作る勇気はありません。
小説がすごく美味しそうに感じるのが悔しいです。

投稿: 豊島のお幾 | 2006.10.31 09:41

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